完結漫画おすすめランキング【122選】

2018年3月1日」から「2018年6月30日」までに紹介したおすすめ漫画「122選」を、改めて以下に紹介する。

各作品に順位は敢えて記載していないが、後に紹介している作品ほど、個人的に好きな作品となっている。


[水野良×たくま朋正×出渕裕] ロードス島戦記 灰色の魔女

ロードス島全土の支配を目論む暗黒皇帝・ベルド。その背景には灰色の魔女・カーラの陰謀があった。辺境の村に住む剣士・パーンは、英雄を夢見て、親友の神官・エト、ドワーフの戦士・ギム、魔術師・スレインと共に旅立つが――。

アニメを初めて見たのは中学生のとき、再放送だった。それからドハマリした。読んでいてその当時を思い出す。懐かしい。そして改めて鳥肌が立った。原作に忠実だし、でも欲を言えばもっと細かく、全3巻でまとめなくても個々のシーンをもっと重厚に描いても良かった。

どうしても思い出してしまってモヤモヤするので、アニメも全13話一気に観直した。何度も何度も観ても、本当に素晴らしい。「風のファンタジア」がめちゃくちゃ好きで、しばらくBGMにしてしまった。


[榎本ナリコ] センチメントの季節

私立女子高に勤める高校教師・山口は、密かに気にしていた受け持ちクラスの生徒・佐藤奈美が近づいてきて、誘惑と教師という良心の間で葛藤する――。

女子高生の売春が主なテーマになっていて、この時代にそれが流行っていたことが伺える。今はそれほど話題には上らないが、この頃と今、どれほど違うのだろうか。

「女子高生」というブランド、思春期の彼女らは、それほど敏感になってしまうものなのだろうか。「男子高生」というブランドに、何の魅力もなかったのだが。


[松本次郎] べっちんとまんだら

女子高生のべっちんとまんだら。杉並区の河川敷で、 死民(ゾンビ)を退治する――。

頭のネジがユルユルの少女がホント得意だと思う。松本次郎の中にある女性像がそのまま表現されているのだろうか。こうも自然に描かれては疑ってしまう。

女子攻兵」もぶっ飛びな作品だったが、この「べっちんとまんだら」と比べればマイルドだと思わざるを得ない。松本次郎の根底には本作のようなモノが渦巻いていると思うと、また全ての作品の見え方も大きく変わってくるはずだ。連載中の「いちげき」も然りだ。


[松本次郎] 地獄のアリス

世紀末の荒野。射撃能力だけは長けている少年・シュウは、人造人間・アリスを連れて一人悪党退治に明け暮れる――。

女子攻兵」と同時連載だったと思うのだが、この作品は「女子攻兵」とは真逆のような印象がある。女子高生に汚染され、女子高生という欲に塗れ抗うタキガワと、この作品の主人公である少年のシュウ。世界の汚さを知っている大人と、これからそれを知っていく、それでも目指すものがある少年。エログロシュールな内容と独特な絵柄のせいで分かりにくいというか、これって普通に青春漫画だと思う。


[星野之宣×J・P・ ホーガン] 未来の二つの顔

2028年に起きた月面の事故で人類は初めてAIに恐怖を抱く。AIの進化は人類を豊かにするのか、それとも破滅に導くのか、一か八かの実験が始まる――。

私が生きている今の時代は、本当にちょうど、次への進化の過渡期だと思う。生命体が、次のステージである「機械生命体」に進化しようとしている真っ只中にいる。

ホーキンスもAIの進化が人類を終焉に導くと何度となく警告しているが、恐竜が絶滅したように、人類の終焉が次の進化への前提条件なのではないだろうか。そして、今までの「人類」という意味は、ごっそり変化する。人格がまったく同じ状態で、身体が機械生命体になる。私は私で何も変わらないのだが、身体はロボットなのだ。

本作のようにAIの実験は現実にも行われているが、このような事故も、いつか、起こるのだろうか。


[きらたかし] 赤灯えれじい

何の取り柄もない地味なフリーターの柳川サトシは19歳。ガードマンのバイト先で、歳上の金髪ヤンキー女・チーコに一目惚れしてしまって――。

ラブコメなんだろうけど、真っ直ぐな青春ドラマ。社会での大人としての独立を目指す若い二人。喧嘩もいっぱいするけど、その度に自問自答して、成長していく。

家を出ていない、まだすねをかじっている年齢でこれを読んでいたら、凄く耳が痛かったかもしれない。世の中で、自分だけが甘えているのではないかと、不安にさせられたんじゃないだろうか。

主人公はヘタレだという紹介だが、そう思える部分がない。立派に生きてるよ。


[東村アキコ] かくかくしかじか

高校三年生の林明子は、美大受験の為に絵画教室に通う。自分の絵の巧さに自信があったが、暴力絵画教師・日高先生に罵倒され続け――。

さくらももこの「ひとりずもう」もそうだが、何かを成した人の自伝というのは全て共通していて、ある時期に、色々なものを犠牲にして一直線に邁進する根性を爆発させている。

この作品は恩師の話をメインにしたいのだろうが、東村アキコが如何に画力を身につけて、そしてデビューしていったのか。私にはその内容の方が大きな衝撃だった。


[佐藤健太郎] 魔法少女・オブ・ジ・エンド

突如上空から無数の魔法少女の群れが出現し、学校内はパニックと死の嵐に。学校から逃げ出した貴衣たちは、次々に襲ってくる新手の魔法少女の猛追を振り切って、事件の真相に迫っていく――。

初めは学園パニックホラーを招く魔法少女モノだと思っていたのだが、真の黒幕や新たなキャラたちの登場、伏線というか本当の裏にある世界設定、全く展開が予想できなくてどう収拾して決着させるのか楽しみだった。

色々な魔法少女が登場するし、共に戦う色々なキャラが出てくるのだが、主人公よりもそういうサブキャラの方が生き生きとしていて、作者もそいつらを気に入っているのがよく分かった。確かにそいつらが活躍している回というのが一番面白くて、その路線をさらに超えてくる「魔法」というある意味やりたい放題の設定、ラストはかなり賛否両論あるみたいだが、まあこれも良かったんじゃないかと個人的には思う。

でも正直、やっぱりもっとキャラと設定を絞っていたら、もっと面白く評価を得られたんじゃないかとも感じる。連載中の「魔法少女サイト」も面白いから、その受けてしまった汚名を挽回してほしい。


[夏元雅人×矢立肇×富野由悠季×千葉智宏] 機動戦士ガンダム戦記 -Last War Chronicles-

宇宙世紀0079。連邦軍マット中尉率いる特殊部隊第三小隊と、ジオン公国軍ケン少尉率いるジオン外人部隊の戦いは、苛烈を極めた――。

SDガンダム ジージェネレーション ジェネシス for Nintendo Switch」をプレイしていて原作を知りたくて読んでみた。そもそもガンダムをアニメなどでも見たことがないので、背景にある一年戦争のことがよく分からず楽しみ方が間違っているとは思うのだが、戦争の話として単純に面白い。

全人口の半数近くが殺されていて、若輩者や、ろくに訓練もできていない新兵が実戦に投入される。ガンダムやMSという己の力量を超えた兵器が、己を過信させて、仲間を死なせてしまう。死のリアルに気がついて、後から恐怖が湧いてくる。

あちこちでそんなことが起こっている。本来なら、そんな経験は、必要ないはずなのに。戦争を知らないから、戦争に若者が軽い気持ちで参加してしまう、断固として拒否するということがない。これは戦争のジレンマだと思う。


[柏木ハルコ] いぬ

バター犬を糖尿病で死なせてしまった女子大生の高木清美。清美は恋愛感情と性衝動をどうしても同一線上には考えられなかった。新たな性の捌け口が欲しいと考えていた清美の前に、ちょうど良さそうな中島が現れる。「中島くんは犬かな」――。

男の恋愛感情は性欲が先行していることも少なくないのではないだろうか。知人で凄い性に潔癖な女性がいるのだが、恋愛はしたくて男性を心から好きになるのだが、性行為は不潔極まりないので一切したくないのだという。

この考えは男の私には理解できないのだが、分かる、という女性は結構いた。随所にある女性ならではの心理描写は凄く興味深い、男の自分には目から鱗なことばかりだ。

花園メリーゴーランド」の独特なエロス感は、この「いぬ」を読むと、なんとなく分かるような気がしてくる。


[岩明均] 風子のいる店

内気な正確でうまく喋ることができない女子高生の風子は、喫茶店・ロドスのウエイトレスになった。案の定、客の注文にもしどろもどろ。そんな私生活にも仕事にも悩む風子を、マスターの西崎はやさしく見守る――。

社会に出ると学生時代の人間関係の悩みがバカバカしく思えてくる。学校ではどうしても同年代の付き合いしかなくて、その中で如何に優位に立つか、仲間はずれにならないか、を強いられるので、本当に視野が狭くなる。

社会に出て、自分の親と同じ世代や、それよりももっと上の世代と接することで、自分がどれだけ狭い世界にいたのかと気づかされて、それは本当にすごく救われる。学校の外に一度逃げてみる、間違っていないと思う。


[望月峯太郎] 座敷女

隣の家のドアを執拗に叩くロングヘアーの大女は、ロングコートを着て紙袋とバッグを提げた異様な姿だった。声を掛けた森ヒロシは、翌日からその女に付きまとわれるようになり――。

時代的にストーカーという言葉が流行り出した頃だろうか。この主人公も防犯、セキュリティの意識がなく、見知らぬ女と関わろうとしてしまう。

目的の分からない、正体の分からない人間に付きまとわれるというのは、読んでいるだけでもかなり怖い。


[森恒二] 自殺島

自殺常習者が秘密裏に集められる「自殺島」。何もないこの島で、同じ精神状態の人間同士が、手を取り合ってサバイバルできるのか。それとも、やはり待つのは、死か――。

人が集まれば柵が生まれる。生きていることに絶望してそれでも死に切れない者たちが集まる。相容れるとはとても思えない。ただ、人間の「生」への執着も計り知れない。その成れの果てがホームレスだったりもする。ただ、ホームレスになっても縄張りがあり、人間関係が完全に消えることはない。

結局、手を取り合って、サバイバルして生きていくしかない。一般社会と何も変わらない。絶望しか見えない者は、死んでいくしかない。生きていることに絶望しなければならないというのは、本当にどうしようもないことだ。

本作を見ていると、人間は役割を与えられ、それを全うできれば、幸せなんだと思う。現代社会は、システマチックになればなるほど、適材適所の人材配置が難しくなるのではないだろうか。個を無視され、機械的な足並みで仕事を求められる。そこから溢れる者が、現世に絶望を抱く。

滅びゆく限界集落で、現世に絶望した者たちに自由に生きてもらうのも、救いになるかもしれない。


[弐瓶勉] バイオメガ BIOMEGA

西暦3005年、人類は実に7世紀ぶりに火星への有人飛行を成功させた。火星からの帰還中、探査宇宙船が大破し、地球周回軌道上に乗組員の遺体が漂流した。乗組員に感染していた未知のウイルス「N5S」が、地上に散っていた――。

冒頭、いきなりバイクのカッコ良さに目を奪われる。それだけでこの作品を読み続けようと思えた程だ。「BLAME!」とは違い、今回は人間同士の繋がりが物語をより深いモノにしていて、SFのカッケ~漫画から一つ抜き出たように思う。これを踏まえて「シドニアの騎士」に進化することを思うと、胸が熱くなる。弐瓶勉作品は、全てを読むべきだ。


[三浦建太郎×武論尊] ジャパン

美人レポーターの桂木由香に一目惚れしたヤクザ・屋島克二は、突如起った地震により未来の世界へタイムスリップしてしまう。そこは、日本がなくなった荒廃した世界だった――。

日本は世界から見たら本当に小さな島国だから、天変地異や戦争でアッという間になくなる可能性がある。その時、帰る国を失った国民は、どんな行動を起こすのだろうか。これは現代でも、世界のどこかで起こっているのではないだろうか。

生きるために戦わなければならなくなったとき、日本人は弱いと思う。だけど、これって悪いことなのだろうか。戦わなければならない、という人類の歴史は、過去も未来も愚かだと思う。


[植芝理一] 謎の彼女X

椿明と卜部美琴は恋人同士。キスはダメだけど、卜部の「ヨダレ」を舐めるのは日課――。

多分、ラブコメなんだけど、厳密なジャンルが分からん。イチャイチャ惚気マンガというカテゴリーで正しいのだろうか。

とにかく卜部美琴は謎の美少女。この特殊な能力は、一体、何なのか。それもずっと謎。この謎のまんま、全12巻を読まされてしまったこの感じも、やっぱり謎の面白さだ。


[じゃんぽ~る西] モンプチ 嫁はフランス人

モテない中年独身おっさん(漫画家)が突如フランス人女性と結婚することに。独身者から既婚者へ、カルチャーショックもあって人生激変のコミックエッセイ――。

謙るというか身内をマイナスに評価した態度を取るのが日本では礼節みたいになっているが、あれは本当に気持ちが悪いものだと思う。誰に教わったのか空気を読んだつもりなのか、そういうことを何の疑問も抱かずに口にする人間と何度もぶつかりそして縁を切ってきた。

フランスではそれは全くの逆で、とにかくパートナーを絶賛する。これはお互いに気分は良いだろうし一緒に生きたいと思うだろうし、仕事をして疲れていても嫌なことがあっても、家に帰ったら幸せだと思える、それが本当に素敵なことだと思う。

カルチャーショックの話がいっぱい出てくるが、やはり私はこの結婚生活の明るさ、言いたいことを言い合って、それは罵り合いではなく前向きな愛情がベースに大前提にあるということが、何よりも衝撃的で本当に素晴らしいことだと終始関心しかなかった。そして明確な羨望だ。

マジでこの奥さんは羨ましいっ!


[サガノヘルマー] BLACK BRAIN ブラック・ブレイン

遥か未来の世界では、人類の進化は二分化していた。対立する未来の人類、お互いが一方の消滅を企んでいた。未来から過去に干渉するヒテロサピエンスのエージェント・アガサ森田。アガサは、自分たちの進化の消滅を防ぐ為、現代の平凡なヒトである宮前カオルに第二の脳「受波脳(ジュパノー)」を埋め込むが――。

絵はハッキリ言って下手だと思う。だけど、時間をおけば何度も読みたくなるこのクセは凄い。それは絵だけのことではない。内容も、未来人に埋め込まれた第二の脳によって超能力に目覚めて超能力バトルを繰り広げるというものだが、単純な善悪の戦いではない。

一応、敵として宮前カオルは戦うわけだが、登場する現代のヒトの発想もイカれていて、これは要するに作者もだいぶ奇天烈な頭してるんだろうなあ、と随所で深く感心してしまう。

ギャグなのかシリアスなSFなのか、同じく五体が変態的に進化・変形する「ムシヌユン」に通じるところもあるかもしれない。

基本的に私はこういうのは大好きだ。


[ヒロユキ] マンガ家さんとアシスタントさんと

マンガ家の愛徒勇気は、アシスタントの足須沙穂都さんと可愛い女の子たちに囲まれて、今日もゆるい日常生活を送っている――。

ちょっとエッチなラブコメ・ギャグというところか。マンガ家がマンガ家の物語を描くのは好きではないのだが、マンガ家的な話はほとんどなくギャグ漫画として普通に楽しかった。というか、かなり下らなくて、これが自分の日常だったらと思うと素直に羨ましい。全10巻で終わってしまったが、このゆるふわ感は凄く好きだった。


[藤子・F・不二雄] 中年スーパーマン左江内氏

冴えない中年サラリーマン左江内氏は、先代スーパーマンからスーパースーツを引き継いでしまう。正義として悪と戦う日々かと思いきや――。

怪獣や悪の枢軸と戦うような話ではなく、日常の揉め事などにスーパーマンとして助太刀する。

何でもない中年が、日常的な正義に奮闘する、凄い心を洗われるというか、日常の生活もきっと大変だろうに、正義の男として日々が忙しくなる。

でも、きっと充実しているんじゃないだろうか。心の何処かで、満たされる何かが芽生えているのではないだろか。何者でもない人間にとって、この話はとても羨ましく思う。


[三浦建太郎×武論尊] 王狼

シルクロードで行方不明になった歴史学者・伊波健吾は、13世紀、ジンギス・カンの生きる世界にタイム・スリップしていた――。

武論尊コラムにあるのだが、ベルセルクの連載を始めてすぐくらいに三浦建太郎はスランプになっていて、それでこの武論尊原作の「王狼」を描いたらしい。

触の後からベルセルクを読み始めた自分としては、そんな初期からスランプになっていたなんて思いもよらなかった。

[三浦建太郎×武論尊] 王狼伝

原作つきで描くことでストーリー漫画を学べたと言われているが、この「王狼」が、ジンギス・カン=源義経という古典的な設定で、歴史改変どうしようという有りがちなストーリーなのに、漫画として凄く綿密で何度も読んでしまうくらい面白いから、後のベルセルクへの踏み台として、素晴らしい選択だったのだろうと思う。


[西餅] ハルロック

女子大生の向阪晴は電子工作が趣味。色々な発明で周囲を巻き込む――。

アプリは誰でも作れる時代、主婦だってスキマ時間で勉強すればリリースできる時代。だからこそこれからはハードを工作できる人材が重宝されるだろうに、業界はその逆になってきている。IoTでハードにも注目が集まってきているが、そもそもこうやって電子工作を楽しむことを発見できる機会がとても少ないように感じる。

小学校でプログラミングの授業ができたが、ハードの図工からの電子工作を男子も女子も楽しめるような時代が来てほしい。

プログラミング面でいうと、これだけ楽しそうな漫画は珍しい。大概は、地獄のような日々、社畜を思わせるテーマが多いからだ。作った人が楽しんでいない、そんなモノ、使いたいか?

それがIT業界、いい加減、変革しないだろうか。


[山川直人] コーヒーもう一杯

一杯のコーヒーを巡る連作集――。

コーヒーに関することで連作になっている。確かに、コーヒーを飲むときって、落ち着いて何かを考えるときというか、余裕を持とうとする気持ちの表れだと思う。

だから、そのタイミングで出会いがあったり、気づきがあったり、読んでると無性にコーヒーが飲みたくなる。


[三部けい] 魍魎の揺りかご

修学旅行中の高校生たちを乗せた船が突如、沈み始めた。同時に、常軌を逸した外国人客が、人間を次々に襲い始める――。

僕だけがいない街」もそうだったのだが、第1巻目の立ち上がりが興味を引かない。なんだかよく分からないところから、徐々にあーそうなのねーと理解できてくる感じだ。

理解できた展開は、完全に「ポセイドン・アドベンチャー」で、これにゾンビ要素を加えた内容。この時点で結末までもが読めてしまうのだが、少年たちの奮闘劇だと思うと、少年漫画の王道である「努力・友情・勝利」はやっぱり面白い。読んでいる情報が整理されてくると単純な話で、登場人物それぞれの結末も嫌いではない。


[宇仁田ゆみ] うさぎドロップ

祖父の葬式で、ダイキチは運命的な出会いをする。祖父の隠し子、りん。親戚にたらい回しにされ施設に送られそうになる6歳のりんをダイキチは引き取ることに。30独身男にそんな甲斐性はあるのか。りんを立派な大人に育てることができるのか――。

結末だけを先に知ってしまって、その前提で読んでいた。ハッキリ言うとこの内容からのこの結末は好きになれなかった。え、それはないだろうって。ただ、それは私も30独身男で何も知らないからかもしれない。

自分の場合はペットだったが、生まれたばかりの子猫を見つけて、どうしようもない衝動から拾って育てた。予防接種もトイレのしつけも、全て甲斐甲斐しく行った。臭いウンコも愛しく思えた。「そんな甲斐性ある人とは思っていなかった」と親や知人から言われた。

正直、ダイキチは、はじめ、このペット感覚に近かったと思う。たらい回しにされて怖くて泣いているりんを見て、「近い未来」を想像してそれが可哀想で、引き取ったのだと思う。少女を人間を大人まで育てるという覚悟をどこまでできていたのか、それは多分できていなかったと思う。

りんを育てることで周囲の父親としての人となりを改めて認識して、その凄さ、尊敬、そして自分は6歳という物心ついた子供を育てたという劣等感、同じ30独身男として、ダイキチの感情にとても共感できた。きっと、自分もこうかもしれない、と。


[弐瓶勉] BLAME!

極限まで発達したインターネット世界。感染前のネット端末遺伝子を求め、探索者・霧亥は何千フロアも超構造体を放浪する――。

構造体の中を彷徨うその感じが読んでいて伝わってくる、息が苦しくなってくるというか、その風通しの悪さが。言葉もなく、感情もない、漫画としては異端だと思うが、この世界観ならそれが至極自然な状態で当たり前に感じる。


[弐瓶勉] NOiSE

BLAME!」の世界から遙かに時を遡った時代。まだ確立されたばかりの超巨大ネットワーク世界で、謎の組織「教団」はシステムの僅かな歪みを利用し次々と魔物を生み出していた。不可解な児童連続誘拐事件への「教団」の関与を突き止めた女刑事・裾野結の追跡が今、始まる――。

BLAME!」の遥か過去の話。「BLAME!」の世界は理解するのが困難なくらい異常な状態だったが、それに比べるとまだ現代の名残があり、親しみやすさはあると思う。全1巻だが物語としてちゃんと面白い。

今作、主人公が女で珍しい感があるのだが、男の描写と区別がつかないくらい迫力がある。それが逆に良い。結は、「BLAME!」の世界ではどうなっているのだろうか。それを想像してまた改めて「BLAME!」を読むのも一興だ。

おまけで、月刊アフタヌーンの「四季賞」を受賞した「BLAME!」が読めるのは嬉しい。これが原点かと思うと感慨深い。


[朔ユキ蔵] ハクバノ王子サマ

多忙な会社員から女子校の教師に転職した小津晃太朗。女子高生はコドモと断じ、先輩女教師である多香子を食事に誘う――。

メインは男の不貞の話。女性からするとこの漫画はとにかく許せないという意見も多い。結末も最悪で、男しか喜ばないという。確かに、男の自分にとっては面白い作品だった。心変わりしてしまうというか、目の前の傷ついた女性を放っておけないのは、むしろ男には美談に見えてしまうのだが、女性からするととんでもない話なんだろう。


[星野之宣] ブルー・ワールド

タイムトンネル「ブルーホール」の調査の為、米英合同調査チームがジュラ紀の世界へ派遣された。太古の恐竜世界で、突如、現代との通信が途絶してしまい――。

ブルーホール」の続編。恐竜の世界に自由に行けるとなれば、それを放って置く理由はない。世界中が利権を巡って調査に乗り出し、そして未知の世界でトラブルに巻き込まれる。

太古の地球を現代の地球と同じような感覚で扱う人たち、愚かというか、人間らしさ、が出ていると思う。そして、サバイバル訓練を受けている軍人が、こういう世界では偉くなってしまうんだよね。


[西森博之] 道士郎でござる

アメリカのネバダ州から12年ぶりに帰国した男・桐柳道士郎は、何故か生粋の武士になっていた――。

不良たちの中で、武力で自分たちの地位を獲得していくという分かりやすいストーリーなのだが、暴力が個人的に好きではないので、その辺りは読んでいてうんざりする。

だけど、道士郎は武士で、武士道精神に則って戦いに挑んでいる。その精神にやられる周囲の気持ちはよく分かる。筋の通った、ぶれない信念を見せられると、自分の今の生き様は、耳が痛い。こんな男が一人いて、出会うだけで、人生は変わるだろうなって思える。


[酉川宇宙] 暴想処女

女子高生・牧野弥生は、二十歳になるまで絶対にセックスをしてはならないとママと誓っていた。牧野は、クラスメイトの鈴木が自分の貞操を狙っていると勘違いして、暴想を――。

表題通りで、処女を守るドタバタギャグ。ただ、誰も牧野の貞操は狙っていない。二十歳までの誓いが、余計に神経質にさせてしまって、どんな些細なことも、貞操の危機に繋がってしまう。かなり強引なので、めちゃくちゃなギャグとして笑ってしまう。

これはギャグ漫画で社会風刺なんてないはずだが、こうやって厳しく性教育してると、やっぱり、意識してしまうのではないだろうか。寝ている子を起こすような気がする。


[山川直人] ナルミさん愛してる その他の短篇

単行本初収録となる諸短篇ーー。

コーヒーもう一杯」は連作になっているので、まずはこの作者のことを知りたければ、本作を読むといいかもしれない。ただ、個人的には表題の「ナルミさん愛してる」よりも、「その他の短編」の方が面白かった。もう漫画は文学の域に達していると思う。


[まつもと泉] きまぐれオレンジ☆ロード

超能力一家に生まれた長男・恭介は、不良の美少女・鮎川まどかと出会った。鮎川に惹かれる恭介だが、後輩のひかるが猛アタックしてきて――。

久々に読んでもかなり面白い。幼馴染がいて後輩がいて、王道ラブコメは良い意味で今も昔も変わってない。すっかり忘れてたけど超能力漫画だったなこれ。どハマリしてOVA版もめっちゃ見てた。


[藤子・F・不二雄] 異色短編集

ちょっと変わった味わいの作品を集めた異色短編集――。

思えば、こんなに切れ味の鋭い短編集を現代に読んだことがあっただろうか。私は漫画界に精通しているわけではないので、無知なため、それを知らない。ただ、これだけのものが改めて世に出ていたら、その作品は世に轟いているはずだ。如何にこの作者が特異な存在であるか。ひとつひとつの物語がそれを物語っている。

ドラえもん」や「キテレツ大百科」など児童向けの漫画を描いている裏には、この顔が表裏一体で存在すると思うと、児童向けと言えどまた違った見え方がしてくる。


[ゆずチリ] 忍者シノブさんの純情

忍者・シノブさんは、今日もごく普通の女子高生を自称する――。

全5巻で終わってしまったのが勿体ない。忍者であることがバレてしまうハラハラな展開のコメディ路線なら割とあると思うのだが、普通に忍者とバレているのに忍者ではないと強情に否定するシノブさんがここまで可愛いとは。忍者仲間も出てきたし、もっと色んな展開に広げられても良かったのにと最終回が残念でならない。


[車田正美] 聖闘士星矢

孤児院で育った少年・星矢は、巨大な財団を率いる城戸家に引き取られ、ギリシアで壮絶な特訓を受けた。成長した星矢は、青銅聖衣を得て、聖闘士となった――。

小さい頃、アニメはドハマリして見ていて、クロスも強請って買ってもらっていた。ただ、子供にしてはあまりに高いので、自分の誕生月のシュラだけしか持っていなかったが、それで大満足だった。

ただ漫画は、あまりに読むのが難解で、子供の頃は無理だった。絵にクセがありすぎるというか、どこをどう読んだら正解なのか理解できなかった。

成人して、入院したときに、あまりに暇なので漫画を読んでみたら、めちゃくちゃ面白かった。この読解力が子供の頃になかったのが本当に悔やまれた。

ちなみに一番好きな技は、サガの「アナザーディメンション」と、シャカの「天舞宝輪」。「アナザーディメンション」はついつい口ずさんでしまうし、「天舞宝輪」は絵が忘れられない迫力だった。


[車田正美] B’TX ビート・エックス

人間の血液で作動する究極の機械戦士・B’T。機械皇国に兄を攫われた高宮鉄兵は、伝説のB’TXを蘇らせた――。

車田正美の作品群で一番好きなのは本作で、「聖闘士星矢」よりも遥かに子ども心に胸が高鳴った。完全な自立式ロボットが相棒というところが未来的で凄く面白かったし、何よりもカッコよかった。相棒と絆で繋がっていて、二人で乗り越えるというのが、そのときの自分には斬新で衝撃的だった。


[森恒二] デストロイ×レボリューション

世の中に希望を見出せない高校生のマコトは、自分の持つ「超能力」を持て余していた。同じ想いの仲間と出会い、社会に革命を起こすことを決断する。この力で破壊活動を始める――。

最終話の賛否両論、圧倒的に否が多いのだが、それはどうも、理解できない、ということかららしい。でも私は、この最終話は理解できたし、作者があとがきに書いていた内容も理解できた。何故なら、私も同じことを考えているからだ。

人間は何故存在するのか、生命とは何なのか、宇宙の意味とは。この作者は超能力を得ることで、その真理に到達しようとした。私は、その超常的な能力では無理だと思っていて(どうやって手に入れるかがファンタジーだから)、私は人間が機械生命体になることで、この最終話の結末を、人間は実現できるようになると思っている。

コブラ」のレディのような状態になるのが、生命体として到達点で、「シドニアの騎士」の播種船がまさにこの実現方法だと考えている。

人間というのは本当に愚かで、やはり強力な武力を手にすると、破壊行動をしたくなるのだろうか。衝動的に。「七夕の国」でも同じ展開だった。それは人間の本能で回避不可能なのだろうか。この破壊衝動についてもこの作品では触れていて、最終話でそれを結論づけているのだが、破壊部分については私はまだ半信半疑だ。


[星野之宣×J・P・ ホーガン] 未来からのホットライン

「タウ波」を発見した物理学者チャールズ・ロスは、メッセージを過去へ送信することに成功した。時を同じくして、世界では「核融合発電」という新エネルギー技術が試運転を開始した。しかし、それ以降、奇妙な事故が起こり始める――。

人間がこの先迎えるであろう新エネルギーの、危険な側面に着目した作品で、本当にこういう事故が多発するのではないか、それは研究者も限られているわけではなく、チャールズが個人的にタウ波を発見したように、地球を滅亡に導く技術がどこかの迂闊な研究者によって発明されてしまう怖さを、読んでいて凄く感じた。「スピリットサークル」でもブラックホールの制御で地球は絶滅の危機に晒される。それはもう現実のことなんだと思う。

この地球を滅亡に導く技術も、それを革新させる人間の進化も、「デストロイ×レボリューション」で語られるような、人間が宇宙へ旅立つ為の進化への前提条件、宇宙誕生から受け継がれる生命体としての本能だとしたら、凄く面白い。

時間と革新的な新技術という主軸でSFとして手に取ったのだが、実はこの作品はまさかラブストーリーだ。


[星野之宣] ブルーホール

海底に発見された深い穴は、6500万年前の白亜紀に通ずる異次元トンネル「ブルーホール」だった。現代の地球汚染の対策として、古代の大気と海水を現代に取り込む計画が立ち上がった――。

時代は宇宙へ流れていくだろうが、海底の神秘も人類は解明できていない。海底にこのような夢を見るのもまた面白い。

なんとなく、ドラえもんに通ずる子どものワクワク感を思わせた。どこかに別次元への扉があって、そこには憧れの恐竜たちがいる。まさに少年SFだ。


[マドカマチコ] WxY

幼い頃から自作漫画の主人公にしていた美少女キャラの「あいみ」。プロのエロ漫画家となった横田高志は今も、連載中の作品の主人公を「あいみ」としていた。実家に帰った際、姪・愛美と久しぶりに対面する。その容姿は、自作主人公の美少女「あいみ」そのものだった――。

「WxY」というエロ記号のタイトルで、エロ漫画家が主人公、安易なエロコメに走っている作品かと思いきや、結構、ちゃんとしたドラマで、恋愛も純愛だし、青春ラブコメと評していいと思う。

だからこそ、全7巻は残念だった。打ち切りなのか分からないが、登場するキャラたちは凄く面白かった。担当の女性も、姪の愛美も、アシスタント時代のライバルたちも、みんな魅力的で、もっともっと人間ドラマを掘り下げてもらいたかった。

漫画家が漫画家の漫画を描くのは大嫌いなのだが(自身の職業のことを描くのは想像が容易いので)、それは抜きにしても、読んで後悔のない作品だった。


[あらい・まりこ] 薄命少女

余命一年を宣告された少女とその父親の葛藤、生と死と笑いの物語――。

あらい・まりこの漫画はいつも心をザワザワさせられる。ギャグテイストになっているので思わず笑ってしまうが、この子はもうすぐ死んでしまう、軽く読めるけど心にドッスリ刺さってくるこの感じは何とも言い表せない。

死を直面している、余命宣告されている人たちの気持ち、それは当事者にしか分からない。こうやって、周囲に笑顔でいてほしい人も、多いんじゃないだろうか。

ジャンルはギャグ漫画なんだろうけど、ギャグ漫画では片付けられないよ……。


[瀧波ユカリ] 臨死!!江古田ちゃん

テレオペ、ホステス、ヌードモデル、様々な職に就き、日々を暮らす女・江古田ちゃん――。

男の自分が読んでも面白いのだが、女性が読んだら共感することが多々あるのではないだろうか。男だとどうしても分からない部分もある。女性側の本音というか。

恋を忘れたってあるが、これくらいの頃から男女の性差なく楽しく一緒に遊べるようになる。それはそれで良くないか、と思うんだが、複雑なところか。


[桂正和] 電影少女

恋に臆病な高校生・弄内洋太は、片想いの相手が自分の親友を好きだと知り落ち込んでいた。そんな折、奇妙なレンタルビデオ店「GOKURAKU」が彼の前に現れ、そこで借りたビデオを再生すると突然、実物の女の子がテレビから飛び出してきた――。

同系統な作品として「I”s」が全く好きになれないのだが、本作は主人公もヒロインも魅力的に感じられる。試練に立ち向かうというのが青春の王道だからだろうか。どんな結末になっても二人とも後悔しないでくれと思いながら読んでいた。

ラブコメでちょっとお色気があるというのが、露骨な少年囲いみたいで嫌いなのだが、これはお色気よりもストーリーが普通に面白くて引き込まれる。お色気いらないと思う。


[ヤマザキマリ] 涼子さんの言うことには

ルミとマヤとその周辺」の続編。世界中を飛び回るバイオリニストの母の代理で、一人でヨーロッパに行くことになってしまったルミは――。

あ、こんな風に成長したんだっていう喜び半分驚き半分。やっぱり子供の頃の奔放さは抑えられて、少し大人になったのか、ゆったりさというか落ち着きが感じられる。子供の頃は落ち着きなかったからね……。

テルマエ・ロマエ」も含めて、この人の体験がこれらの作品を作り出していると思うと、感慨深い。


[西木田景志×蔵石ユウ] 我妻さんは俺のヨメ

高校二年生の青島は、タイムスリップ能力に目覚めた。未来では、学校一の美少女・我妻さんと結婚していた――。

これは多分、夢で見たあの娘を好きになる、から発想が来ているんじゃないかと思う。ラブコメだから、いっぱい女の子が登場するのだが、個人的には我妻さんが一番魅力がない。学校で一番可愛い、だから好きだ、そういう想いは未熟な青春期に抱きやすい。そして夢を見たから、きっと、あの娘が好き。

今振り返ると、学生時代、なんで顔だけであの娘のことが好きだったのかと思うことがある。もっと自分と波長の合う女の子がいたのに。この作品を読んでいるとその後悔が湧いてくる。

ラブコメだが基本的にはギャグで、それが馬鹿馬鹿しくて何度も読んでしまう。シルヴィアが凄い好きで、シルヴィアが登場してからがかなり面白い。


[小畑健×大場つぐみ] DEATH NOTE

夜神月が拾った一冊のノート。そこに名前を書かれた人間は必ず死ぬという、「DEATH NOTE」だった――。

ウイングマン」ではノートに描いた夢が実現したが、これはその逆というか、死の夢を叶えてくれる。どちらも、一度は誰もが空想したことではないだろうか。

自分の嫌いな人、身近な人たちを真っ先に殺すことを考えてしまうが、夜神月は世界のことを考える。悪人が死という恐怖でいなくなった世界が、本当に平和な世界だと考える。

この考え自体はとても幼稚で、温室で育ってきた坊や感がすごいのだが、じゃあ、真の平和ってどうやって実現するの、という問題提起にもなっていると思う。死ぬから悪事を働かない、じゃなくて、そもそも悪事を働かない世界って、どんな世界?


[めいびい] 黄昏乙女×アムネジア

学校の怪談に登場する女学生・夕子。貞一の前に、幽霊として夕子は姿を現す。夕子本人も知らない自身の死の謎。夕子と貞一は真相を探るために怪異調査部を立ち上げる――。

めいびいの描く女子がとにかく可愛いし、夕子は幽霊なのでホラーかと思えば、結構なラブコメで、怖い要素はない。死の真相を探るというミステリーも面白い。これは「君が死ぬ夏に」にも似ているかもしれない。どちらも女子が幽霊だし。

学校の階段として存在した夕子と、いずれ卒業してしまう貞一、その結末もなかなかだ。


[小田扉] ちょっと不思議な小宇宙

「擬人イラストクイズ」や「記憶喪失ゲーム」を発明して周りを楽しませるまりちゃん、スマホを駆使して口げんかをする双子の小学生、宇宙人の青井さんなど、濃すぎるキャラが次々登場。日常と空想が入り混じる、ちょっと不思議な物語集――。

ちょっと不思議というか、変な人しか出てこないのが小田扉の通常運転。でも、普通ってなんだ、変ってなんだ。既成概念、固定観念でいっぱいなのは私たちの方かもしれない。日常がこれだけ楽しかったら、ストレスも減るだろうに。


[松本次郎] 善良なる異端の街

暴力、グロテスク、セックス、ナンセンス、ガンアクション、歪んだ日常を描くオムニバス集――。

冒頭「わたしのお父さん」からいきなり引っ込まれた。オチを見てこれぞ松本次郎って。「女子攻兵」の基になっている「女子高兵」も掲載されている。これだけでも十分に面白いが、ここから長編にもっていったのが凄いというか嬉しい。


[里好] 哲学さんと詭弁くん

哲学を雄弁に語る少女に、詭弁で少年は立ち向かう――。

哲学と詭弁でやり合うラブコメ、これに特化すればとても面白いと思った。ただ、面白い反面、ものすごくハードルが高い。

それって哲学かなあ、っていう感じになってしまったのか、僅か全2巻で終わってしまった。ネタを作るのが相当難しかったのだろう。テーマとしては、かなり高尚な漫画にも成り得るので、もっともっと読んでいたかった。


[眉月じゅん] 恋は雨上がりのように

高校二年生・十七歳の橘あきらは、バイト先のファミレス店長に恋をした――。

連載開始当初から読んでいて、所謂「枯れ専」の一途な女子高生というのが凄い面白かった。

オッサンが舞い上がるのではなく親子ほどの歳の差に苦悩して避けようとするその感覚は安易な男の理想の実現ではなかった。

ラストだけ賛否両論があり主に否が多いようだが、これは分かるような気がする。私はこのラストでも悪いとは思わなかった、「恋は雨上がりのように」という題名の意味をやっと理解できたから。


[叶恭弘] KISS×DEATH

遥か彼方の惑星で流刑に処された囚人たちがいた。流刑地は、地球。囚人たちは地球人の少女たちの身体を乗っ取り、逃走を図った――。

宇宙人が地球人の身体を支配するとなるとどうしても「寄生獣」を想起してしまうのだが、ベロ、舌に寄生している点がこの作品の面白いところだ。

最終的に囚人を捕獲するためには、異星人同士で対峙しなければならない。そのためには、地球人同士が口を合わせることになる。地球人の意識は生きているので、そこがラブコメ的な展開になっていく。


[鳥山明] 銀河パトロールジャコ

銀河パトロール隊員・ジャコが地球に不時着した。自称、超エリート隊員らしいが――。

ギャグ漫画家であることを再認識させられる、普通に笑えてほのぼの面白い。これだけで数巻シリーズ化してくれても良さそうだが、ドラゴンボールと関連させてしまう辺りは残念だった。ドラゴンボール大好きだからそれはそれで嬉しいのだが、ドラゴンボールに頼らなくても面白いじゃんって。


[東村アキコ] 海月姫

クラゲ大好き女子・倉下月海は、オタク女ばかりが集まる天水館に暮らしていた。ペットショップで死にかけたクラゲを助けてくれた美女を部屋に招くが、「蔵之介」という名前だった――。

モブみたいなあまり特徴のない感じの女の子が主人公で、どこに面白さを出してくるのかと期待して読んでいた。クラゲを語るときの月海はオタク特有の気持ち悪さで、その描写には安心したが、他の尼~ずのキャラと比べるとキャラが薄いというか、主人公に据えるのである程度「まとも」でないとならないのは分かるのだが、そこまでオタク臭がしなかったのは期待を下回ってそこだけが個人的には残念か。

シンデレラストーリーだから普通にメイクしたら可愛くなるのは良いのだが、月海よりもまややの方が際立つ美しさが面白かった。

終盤の世界的な展開は読んでいて正直なところ興醒めだったのだが、いやいや、そんなわけなかった、ラストへの展開、凄く良かった。最後の2巻くらいは読む気なかったが、読まないと本当の面白さで決着できない!


[小畑健×桜坂洋×竹内良輔×安倍吉俊] All You Need Is Kill

ジャパンの南方、コトイウシ島で、「ギタイ」と呼ばれる化物と、人類は嘗てない戦争を繰り返していた。初年兵であるキリヤ・ケイジと戦場の牝犬と呼ばれるリタ・ヴラタスキは、その戦いに身を投じていく――。

面白い。素直に。こんな真っ当なSFを描いていたなんて知らなかった。どんどん解き明かされる仕掛けにワクワクする、止まらない。全2巻は勿体ない気もするが、だからこそ凝縮されて一気に面白さが駆け抜けるのか。絵柄もベストマッチしている。リタも可愛いし。もっとこんな感じの本格SFを漫画で読みたくなる。


[藤田和日郎] からくりサーカス

人を笑わせないと発作で死んでしまう青年・鳴海は、遺産目当てで命を狙われる少年・勝と出会った。勝から離れず常に護衛する女・しろがねは、「からくり人形」を操った――。

藤田和日郎の漫画は好きになれなくて、唯一、この漫画だけが面白かった。この漫画も、冒頭はよく分からなかったが、第03巻あたりの総力戦で一気に飲み込まれた。からくり人形の多様さがとにかく面白いし、背景の壮大なストーリーはワクワクが止まらなかった。

子供であっても、死線を乗り越えれば、大きく成長するのだろう。今の時代は、子供が危険な遊びなんてしなくなったから、精神的に弱い大人になると言われているが、それは確かなことかもしれない。


[小畑健×大場つぐみ] バクマン。

自らの文才を認める中学生・高木秋人は、同級生・真城最高の絵の才能を見逃さなかった。二人でコンビを組み、漫画の世界で成功してやる――。

ジャンプ作家がジャンプ編集部を題材にしているということで、読まず嫌いしていたが、少年漫画ド真ん中の青春ストーリーでかなり面白かった。これは「友情・努力・勝利」のガモウひろしの真骨頂のように思う。

真城最高と亜豆美保の青臭い純愛の約束だったり、逆に高木香耶の軽い感じとか、ラブコメとしても王道で面白い。

コメディタッチなので軽く読めてしまうが、二人の毎日の鍛錬というのは、現実に置き換えれば相当な努力だ。世の中、ぽっと出て成功したみたいな感じがするが、こういった日の目を見ない努力が影に隠れているということを、少年は如何に認識できただろうか。だからむしろ、大人の方が、響いてくるのかもしれない。

さくらももこの「ひとりずもう」も同じで、自分の能力の正しい方向に、どれだけ時間を割いて勉強できたのか、今、若い時代を後悔してもしかたがない。今からでも、やれることを始めたくなる。

それにしても、これをガモウひろしの絵で描いていたら、と思うとゾッとするねえ。


[武富健治] 掃除当番

鈴木先生」の原点となった「掃除当番」を含む、オムニバス集――。

今、大人になれば、些細な問題なのだが、まだ産まれて十数年の子どもたちにすれば、毎日が大きな事件だ。その感性をまだ覚えていて、それを表現し、今大人になった読者に改めて問題提起できる描写力は、「鈴木先生」でも勿論だが、本当に脱帽だ。

これを基に「先生」という立場になって、教育現場に戻り、学生生活での失敗や現状の残滓を、綺麗にしたいという想いで教壇に立ってもいいのではないかと思えてくる。武富健治にはこれからも学園モノを描いてほしい。

ちなみに一番頭の中に残っていたのは「まんぼう」だ。これはいつか使いたい。


[堀尾省太] 刻刻

ニートの兄・翼に幼稚園へ甥・真を迎えに行くように頼んだ樹里は、自分が行くべきだったと悔いていた。翼と真が誘拐された。身代金を指定時間までに用意できない場合は人質を殺すと脅され、いよいよ間に合わなくなった樹里のじいさんは、覚悟を決めた。佑河家に代々伝わる「止界術」を使い、世界の時を止めた――。

本屋でジャケ買いして大当たりだった本作。表紙を見ても感じるが、絵がとても淡白で書き込みが複雑ではなく、それがとにかく読みやすいので、この世界観に没入できる。改めて全巻を一気に読んでも、あっという間なくらい、無駄な描写がない。ただ逆に、この漫画のクライマックスシーンで、重みが足りない感じがしてしまったのは残念か。

あと、何故か、全体として緊迫している状況なのに、物語のスピードがとても緩やかに感じる。これはこの漫画が時間を主軸にしていて、時を止めているから、敢えての演出なのだろうか。だったら天晴だ。まんまとその策略に引きずり込まれている。

だとすると、重厚さが感じられないのは、この佑河家のどこか抜けている感じ、ボケていて緊張感のない感じを表現しているのだとしたら、やはりそれもまんまと読んでいて印象操作されている。今連載中の「ゴールデンゴールド」を読んでいても同じようには感じられないので、敢えてなのかもしれない。それは凄い。

時間は必ず空間の話になって、宇宙の話になる。宇宙の話になれば真理の話になる。物語の真相、敵の親玉・佐河の考えにはとても共感した。私も同じ選択をするかもしれない。


[鳥飼茜] 先生の白い嘘

24歳の高校教師・原美鈴は、担任の男子高校生・新妻の淡々とした不倫の告白に思わず怒りを顕にしてしまう。初めて口にした自身の本音に戸惑う美鈴、新妻は支えになれないかと美鈴を想い始める。しかし美鈴は、今もある男からレイプされ続けていた――。

女教師と男子生徒の、それぞれ二人のレイプ体験から物語は交錯するのだが、大きな意味での人との繋がりを考えさせられるものだった。最後、美鈴が終業式で行うスピーチの内容は、この漫画のような特別性被害に遭った人だけに響くものではなく、それを前提に感情移入して読まないと心響かないものでもなく、心の接触が希薄になり少し触れただけでも傷がつきそうな現代の稚拙化した人間関係に一石を投じているような気がしてならない。

途中、結末までには、高校生同士の恋愛を織り交ぜてくるのだが、子供は子供の恋愛を無邪気に楽しんでいればいいんだっていう側面もありながら、女をアイテムにしか見ていない性衝動だったり、真剣に相手を「人間」だと感じたことがあるかっていうのを、突きつけられているように感じられた。

レイプというのが究極の自己満足で、相手を人間として見ていないわけで、そこまでの体験をしないと、そういう前提で語らないと世に響かないというのは、残念でならない。


[望月峯太郎] ドラゴンヘッド

トンネルの落盤事故で、新幹線は闇に呑まれた。修学旅行帰りの高校生たちは、ほとんどが即死だった。生き残っていたのは、テル、アコ、ノブオ、の三人だけだった――。

最後まで何が起きたのかが詳細には語られなかった。別に序盤で何が起きたのか、分かっても良かったような気がした、面白さはそこのミステリー加減ではなかったから。

連載当時、同じ高校生として読んでいて、連載から目が離せなかった。例えば地震や津波でこういうことを自分が体験する可能性も、日本に住んでいる限りは可能性として皆無ではないからだ。そのときにどれだけの行動ができるのか。理解はできないが、ノブオの気持ちがなんとなく分かるような気がした。


[奥浩哉] め〜てるの気持ち

三十歳で、童貞で、ひきこもり歴も十五年、ネットと少年マンガを生き甲斐に日々を過ごしてきた小泉慎太郎は、父親の再婚で新しい母親を得ることに。その母親は、自分よりも歳が下だった――。

こんな男の理想みたいな話は現実とは違う領域で認識しながら読まないといけないのだが、ひきこもりのニートが、社会に出ていくキッカケのひとつに成り得ることだと思う。いや、この母親の年齢と容姿の話ではない。この母親の向き合い方が。


[ベニガシラ] 美少女同人作家と若頭

口にするのも躊躇うそのペンネームは「バナナウンコパクパク」。初めて同人作家として参加した同人誌即売会で、記念すべき最初のお客様は「若頭」だった――。

久々に声を出して笑った。「バナナウンコパクパク先生」の破壊力はヤバイ!!!

この馬鹿馬鹿しさ、軽さがホント気持ちが良くて、何度も読み返した。これは読んでたら嫌なことも忘れていつの間にか元気になる。「描き下ろし大量追加」ということだったが、もっともっと読みたかった。

極道とどんどん深い付き合いになっちゃうとか、続巻あってもいいんじゃないか?


[鳥山明] ネコマジン

生態不明のネコのような不思議な生物・ネコマジンが、次々とおバカな騒動を巻き起こす――。

これはズルい。作者自身が「ドラゴンボール」のパロディを描くんだから。鳥山明は元々ギャグの人だから、このお気楽な感じが本性だと感じる。

ネコマジン自体もキャラが立っていて面白い。だから何故、「ドラゴンボール」のパロディに走ったのかが分からない。人気が出なかったのか?

ほのぼのしているというか、とにかくバカバカしい面白さ。ネコマジンのキャラのふてぶてしさ、小憎らしさ、それがたまに凄く見たくなる。

鳥山明はほんとにキャラのデフォルメが天才だと思う。


[都留泰作] ムシヌユン

5度目の院受験に失敗し「昆虫博士」になることを諦めた上原秋人は、故郷である日本最南端の島・与那瀬に戻ってきた。失意の中、覗きと自慰に明け暮れていたが、ある昆虫を発見してから身体に異変が――。

はじめはホントにこれはギャグなのか本意気のSFなのか寄生獣のような盛大なドラマになるのか、よく分からなかった。もしかしたら単なる夢に破れた成人男性の転落をぐちゃぐちゃに描いて終わるしょーもない駄作なのかもしれないとまで思った。

そうやって頭にモヤモヤ残って気になるので、連載を追っていたのだが、少しずつ事件が判明してきて、SFとしても面白かったが、結局、成人男性の性の意識というか、いつまで経っても初恋の女性を忘れられないとか、そういう本質を過剰に醜く突きつけられたみたいで、読んでいて終始、落ち着かなかった。

とにかく、SFとしてはかなり盛大な重大事件が起きているのだが、その印象がとても薄くてどうでもよくて、上原秋人の本質から煤ける私自身の本来の姿というか、自己という認識、性の感覚、一皮むけば、上原秋人を笑えるような人間ではない、自分も同じ醜い存在なんだ、とか、そういったものが強烈に頭に残った不思議な作品だった。


[桂正和] ZETMAN

手の甲に不思議なコブを持つホームレスの少年・ジン。何の変哲もない平穏な生活を送っていたジンの前に、殺人鬼が現れる。その姿は、人間とは思えなかった――。

ウイングマン」の時点で、このヒーロー像は描きたかったのではないかと感じた。ヒーローとは何か、正義とは何か、それに真っ直ぐな疑問を抱き苛まれるのは純粋だからこそで、その心はやはり「大人になれない少年」であると言わざるを得ない。

この少年の心のまま、大人の社会でヒーローが活躍しようとしたら、まさにこういう結末になるんじゃないかと、思わされる。本当に真に迫る素晴らしいヒーロ―ドラマだった。

現実世界に溶け込むヒーロー漫画の「正解」を読んでしまったのではないだろうか。これ以上のモノを想像することが私にはできない。


[ヤマザキマリ] ルミとマヤとその周辺

北国の町に住んでいる小さな姉妹・ルミとマヤ。お父さんはおらず、お母さんも仕事でほとんどいない。だけどルミとマヤの周囲には、温かくやさしい人たちばかり――。

昭和が舞台の話で、自分には少し年代が上の設定なのだが、家族が好きな人はもちろん、家族と上手くいっていない人にとっても、心に響くものがあると思う。

子供の成長が如何に周囲の大人たちに影響されるか、どれだけ笑顔でいられるか、凄く大事なことで、狭いコミュニティに閉じ込めて育てている今の子供たちは本当にのびのびと育っているのか、心配になってしまう。


[山田芳裕] 度胸星

人類で初めて火星に降り立った宇宙飛行士たち。突如、彼らからの連絡が途絶えた。救出作戦のため、宇宙飛行士の選抜試験が始まった――。

衝撃の打ち切り作品。その事実を知らずに読み始めて後悔が酷かった。それくらい、面白かった。何故、ここで終わるのか、何故、人気がなかったのか。かつて読んだ宇宙漫画の中でも相当に面白いのに。最近はもう世間は宇宙自体に興味がないらしい。何故だ。もう目先は宇宙時代だろう。


[さくらももこ] 永沢君

主人公は永沢君。いちおう親友は藤木君。清水市立桜中学校を舞台に、彼とその周りの人達の中学校生活を描く――。

永沢も藤木も小学生としては違和感があったのだが、中学生はドハマリしていると思う。こじらせた感じがまさに思春期だし。でも中学生としては極自然で普通なのかもしれない。多分、大人になったら、真っ当なサラリーマンとかやってるんだろうね。


[小田扉] しょんぼり温泉

活気もない客の姿もない廃れた温泉街、その名も「諸掘温泉」。大人たちは諦めているが、子どもたちは街の再興に燃え上がる――。

まさか2巻目が出るとは思わなかった。嬉しい誤算。小田扉はコアなファンが付いていると思うのだが、一方で、何が面白いのか分からない、と言われることも多い。

この作品は、温泉街が廃れている、ではどうしようか、という凄く分かりやすい大喜利になっている。世界記録に挑戦したり、ご当地アイドルを作ってみたり、このほっこりクスクス大喜利は、小田扉の真骨頂でしょう。


[岩明均] 七夕の国

民俗学教授・丸神から呼び出された南丸。しかし、丸神は調査の為、「丸神の里」へ行ったまま行方不明だった。残された研究生たちの話では、南丸と丸神は「同じルーツ」らしい。気になった南丸は、丸神を追う。何の取り柄もない南丸だが、些細な超能力が使えた――。

花園メリーゴーランド」と同じく、閉じられた集落の話で、超能力という現実離れしたフィクションではあるのだが、犯罪も殺人も公にならない集落では、そういった能力に支配されている可能性も捨てきれないと思うと、読んでいて面白い。

超能力が使える、それは一国が強力な武力を確保したことに等しくて、武力行使、略奪、どうしても人間はそういう道に走ってしまうのだろうか。森恒二の「デストロイ×レボリューション」もそれは同じだ。

超能力というとどの作家も同じ発想になってしまう、やはり人間の本能に埋め込まれた、進化の為の支配欲と、それに対する防衛本能なのだろうか。


[岡本倫] 極黒のブリュンヒルデ

高校生の村上良太は、幼い頃に亡くした幼馴染のことが片時も忘れられなかった。高校では天文部に籍を置き、幼馴染との約束を果たす為に、宇宙人を探す日々。そんな良太の前に、幼馴染としか思えない美少女・黒羽寧子が転校してきたが――。

エルフェンリート」の衝撃は凄かった。周囲から、また「エルフェンリート」みたいなのを書けよ、と言われて岡本倫は原点回帰したそうだ。

エルフェンリート」を読んでほとんどの読者が思ったはずだが、新人ゆえのあの稚拙な絵が、本当に残念な作品だった。バリバリのプロが描いたら、完璧な作品になっただろうに、と。

そういう期待も込めて本作を読んだわけだが、期待を裏切られることは全くなかった。読みたかったのはまさに、これだ。今、プロの絵で描かれたこのダークなラブファンタジーが、あの鮮烈なデビューで読者に抱かせた、課題の答えだ。


[押見修造] 漂流ネットカフェ

29歳、平凡な会社員の土岐耕一は、偶然立ち寄ったネットカフェで初恋の女性に再会した。お互いに再会を喜ぶ最中、ネットカフェの外の世界が突如全て消えてしまう――。

中学生時代の初恋に縛られていて、それはまさに押見修造自身のトラウマ。それを解消する作品ということで、主人公が気持ち悪いと悪評もあるのだが、それが押見修造の作品の良いところで、果たして、学生時代の、子供時代のトラウマを完全に克服して、完全な大人になった人は、いるのだろうか。

誰もが、心に子供の頃の傷を持っていて、それをひた隠して「大人」だと名乗っているようにしか思えない。これを読んでいてとても強く共感できたのは、かつて好きだったあの子に、もし再会できたら、恥ずかしさから満足に話すこともできなかった臆病な自分を取り戻すかのように接するだろうということ。

パニックからのサバイバルという作品だが、そこよりも、結末での主人公の変化とか、そういうところは押見修造らしい文学だ。


[吉河美希] 山田くんと7人の魔女

高校で一人浮いている問題児・山田は、優等生・白石うららと一緒に階段から転げ落ちてしまう。気がつけば、山田と白石の体が入れ替わっていた――。

導入はありきたりな転げ落ち体入れ替わりというツカミで、平凡なラブコメという印象を受けてしまったのだが、その真相は転げ落ちたことではなくキスをしたこと。キスすることで体が入れ替わる、異性とのキスは勿論、同性ともキスしまくるしまくる、これだけでもキスしまくりラブコメとして、他のラブコメと一線を画していてかなり面白い。

吉河美希は女性なのだが、読んでいて女性が描いているような感じはしていた。少年誌のラブコメはお色気は勿論欠かせないわけだが、お色気が全くエロくない。女性が女性のコメディの延長で見せる色っぽさというか、エロではなく単なるコマの笑いの事象のひとつというか。女子キャラたちも絵は可愛いのだが、そういったエロさが全くないので、むしろこの作品は女性にオススメではないだろうか。少女漫画と言われたらそうなんですか、と思ってしまう感じの内容だ。

かなり人気があったんじゃないかと思う。実際に面白くて連載中は私もずっと読んでいたし。でもここまで盛大な物語になるとは、全く思っていなかった。今になって一気に読もうとすると、かなり読み応えある。


[小田扉] フィッシュパークなかおち

普通の住宅街にある普通の大きさの、普通ではない釣り堀。その名は「フィッシュパークなかおち」――。

団地ともお」に出てきても何ら違和感のない世界感。つまりは小田扉ワールド炸裂の作品。読めば読むほど味わい深く、愛着が湧いた頃には最終話という、この寂しさ。全1巻で終わるのはホント勿体ない。

小田扉は日常に笑いを見出すのが天才だと思う。キャラが着ているシャツの柄だけで笑いを取ったり、そのひとネタが凡人には出せない。そしてホロっと涙させるんだから。ある意味では嫉妬する。


[藤子・F・不二雄] モジャ公

遥か彼方の宇宙から地球にやってきた宇宙生物・モジャラとロボット・ドンモ。家出と称して強引に連れられた地球人の少年・空夫は、当てのない行き当たりばったりの宇宙冒険旅行を始めるが――。

完全に読まず嫌いだった。めちゃくちゃ面白い。「彼方のアストラ」で、宇宙冒険SFは人気がないらしいと書いたが、何故、今の子供はこの宇宙の壮大さ、多様さ、無限の可能性に夢を馳せないのだろうか。そんなに夢の無い世の中で、心が荒んでいる?

ドラえもん初期のような、ブラックユーモアが面白い。藤子・F・不二雄の真骨頂は、やはりブラックユーモアだと思う。モジャ公は、21エモンの続編らしいのだが、21エモンよりも少し背伸びした少年向けの感じがして、遥かに面白い。

もう、今の時代、技術革新で宇宙関連の話題は避けられなくなって来ると思う。今の子供たちは、宇宙への移住、宇宙への旅行が、極めて現実に近い世代だと思う。今、改めて、宇宙冒険SFは人気が爆発してもおかしくない。

モジャ公みたいな、藤子・F・不二雄みたいな、「彼方のアストラ」みたいな漫画、どんどん読みたい。


[ガモウひろし] とっても!ラッキーマン

追手内洋一は「日本一ツイてない中学生」。飛来した宇宙人の侵略に巻き込まれて、「ラッキーマン」として生まれ変わる。宇宙一のラッキーを手に入れた追手内洋一、ヒーローとしての戦いの日々が始まる――。

中学生のときに連載が楽しみでコミックスも全巻買っていたが、同級生の誰からも賛同を得られなかったし、逆に凄く馬鹿にされた。なんであんな漫画が好きでしかも金を使っているのかって。これもあって、自分は同年代とは気が合うことは絶対にないと確信したのを覚えている。

とにかく、絵は下手だし、ストーリーはその場凌ぎ感が酷かったけど、コマに書き込まれた小さなセリフとか、背景でのキャラ同士の喧嘩とか、業界人にしか分からないネタとか、そういうのが凄く面白くてめちゃくちゃツボだった。

この感覚が、一般的な中学生に通じないのは無理もないと思っていたが、今になっても、ガモウひろしの小ネタが好きな自分は、少しやはり世間からズレているのだと思う。

ガモウひろしが、この後、「DEATH NOTE」や「バクマン。」をヒットさせるような作家になるなんて、誰が思っていただろうか。子供に人気がなくても、全16巻まで続いた実力、大人たちは、この頃から確信していたのかもしれない。


[原田重光×萩尾ノブト] ユリア100式

完全自立式究極のダッチワイフロボット・ユリア100式。あらゆる「性技」に精通しているユリアに、大学生・瞬介もタジタジ――。

ラブコメというよりは完全にエロコメだと思う。ラブよりも基本エロい気持ちが突出したギャグだから。エロいとは言ってもあくまでもコメディ、とにかくギャグが馬鹿馬鹿しくて面白い。

全12巻もまさか続くとは思わなかったくらいアホ満載なのだが、ユリアのキャラがとにかく可愛いし、型式の違う姉妹たちも愛嬌があって、すっかり連載を待ち遠しく思っていた。きっと、ファンはそういう同じ思いで読んでいたから、こんなにも続いたのだろう。最終回はやっぱり寂しかった。


[衛藤ヒロユキ] 魔法陣グルグル -MAGICAL CIRCLE-

父親に無理やり勇者として育てられた少年・ニケは、ミグミグ族の少女・ククリと出会った。ククリのさっぱりな魔法と共に、魔王を倒す旅が始まる――。

連載開始頃はこのRPG風ギャグはあまりなくて凄く画期的で面白かった。少年ギャグ漫画として王道でとにかくゲラゲラ笑っていた。

時が経つに連れて絵柄が変わってきた。それは少年としては戸惑いのある感じの絵柄だった。いわゆる萌え絵というか、やたらククリが可愛くなってしまったというか、ギャグよりも萌える可愛さが多くなってちょっと読んでいるのを口にできない感じになった。それを中和するようにギップルが出てくれるのが妙に安心した。

あれから少年を卒業して、今連載している「魔法陣グルグル2」を読むと、これまた面白い。今、免疫?が出来て改めて一から連載も含めて一気に読むと、懐かしさもあってかなり楽しい。

なんか凄い、いつの間にか、少年の頃の思い出の作品になっていた。


[岡本倫] エルフェンリート

囚われていた研究所から逃げ出した、突然変異体の少女・にゅう。流れ着いた浜辺で少年・コウタと出会うが、にゅうは特殊部隊SATに追われ、人間兵器と呼ばれていた――。

発表されたときは斬新さというか、萌えとグロの融合、これこれ待ってました感が凄かった。絵の残念さは散々批評されていてそれは本当にそうなのだが、それを忘れて没頭してしまうくらいストーリーに惹かれてしまう。

バンバン次々に人が玩具のように殺されるのだが、人のつながり、心、情について、どれだけ考えさせられるか。


[阿部共実] 空が灰色だから

人間関係がうまくいかない思春期特有の「モヤモヤ」「ザワザワ」を、10代女子を中心に描いたオムニバス短編集――。

これを読んで理解できる人と理解できない人がいるだろう。理解できない人は学生時代が青春時代が楽しくて幸せでそれでいいと思う。無理してこの作品を理解する必要はないし理解できるとも思えない。

私は特に最終話なんかは思わず涙してしまったが、経験があれば心がとても苦しくなるだろうし、でも大人になったことでそれが自分を前に向かせてくれるというか、後悔と反省を糧に生きていこうと思えるようになっていることに気づくことができる。

自分にはもう取り返しのつかない青春期だけど、今、苦しんでいる子供たちに、どうにか同じ思いをしてほしくないと願ってしまう。

救いのない漫画だと言われることも多いが、逆に今まさに当事者にとっては、これは救い、手助けになるかもしれない。


[さんりようこ] B型H系

美少女・山田は15歳、処女。エロな妄想ばかりする彼女の目標は、セフレを100人作ること――。

さんりようこの4コマ漫画は女子特有のエグいシモネタが強いので、男子としては期待せずに読んでいたのだが、処女なのにセフレを100人作りたいっていう女子高生の話だから、エグいシモネタは出てこなくて、初なシモネタが微笑ましいというか、自分にはその節度がちょうど良くて有り難かった。

つか、こんな女子高生が現実にいたら、きっと好きになるよ。


[徳弘正也] 昭和不老不死伝説バンパイア

マリアは不老不死のバンパイアだった。彼女を神と崇め愛す男・十文字篤彦と、彼女を普通の女性として愛す少年・本田昇平、二人の想いが交錯する――。

人間の欲望と弱さ、それを徳弘正也節で痛烈に描いているように感じる。何の為に生きるのか。何に己の命を掛けるのか。エロとギャグがあるからこそ読むに耐える、人間の醜さは強烈だと思わされる。

不老不死は人ではない、人ではなければ神か悪魔か。それを神として縋ってしまう、崇拝してしまう人間は、なんて欲深く弱いのか。

[徳弘正也] 近未来不老不死伝説バンパイア

西暦2014年、日本はマリア会に支配されていた。青年に成長した本田昇平は、マリアと共に運命と戦う――。

マリア、不老不死の人生とは、どんな選択の連続なのだろうか。神と崇める人間がいる、神に祭り上げられること、きっとそれは一時的なものでなく、人間はずっとそういう矮小な存在だ。そんな世界に、絶望してしまわないのだろうか。


[山岸凉子] 舞姫 テレプシコーラ

小学五年生・篠原六花と、ひとつ歳上の姉・千花は、バレエ教室を営む母のもとでバレエを習っていた。プロバレリーナを目指す千花と比較されるが、六花はただバレエが好きだった――。

バレエ漫画で唯一面白いと思って没頭したのが本作。根性だけでなんとかなるスポ根みたいな内容じゃないから、読んでいて拒否反応が無かったのだと思う。

バレエの世界のことなんて自分とは程遠いから現実は分からないが、ダークサイドも描かれていて表の晴れ舞台だけではないというのが知れてそれが興味深い。

たまに手に入らないからといって巻を飛ばし読みする人がいるが、絶対に頭からひとつも飛ばさず読んでほしい。予想してなかった展開があって驚いたから。

[山岸凉子] 舞姫 テレプシコーラ 第2部

衝撃の第一部から、子どもたちの成長した様、いつの間にか変な親心が自分に芽生えていて、にんまりしながら見守ってしまうこの感じ。

第一部も含めて、世間の反響からして完全なるフィクションではないのだろうなと思うと、感慨深い作品だ。


[さくらももこ] ひとりずもう

国民的少女・ちびまる子ちゃんとこさくらももこの青春を描いた成長記――。

さくらももこ本人のことを好きかどうかの個人的な感情はおいておいて、何かを成した人というのは、どこかの時期で形振り構わず寝る間を惜しんでひたすらに突進した時期がある。

自分には、そんなことができたか、できているか。若さゆえの挑戦であると、思いたくない。いくつになっても、自分の能力を諦めて平凡に死ぬことを決めてしまいたくない。

まる子のお母さんの、子を心配する一言は、子供の視点からすると、酷い、味方じゃないんだ、と思ってしまうねえ。


[桂正和] ウイングマン

正義のヒーローに憧れる中学生・広野健太は、拾った謎のノートに落書きしてしまう。そこに描いたのは「ウイングマン」という健太が空想するヒーロー。健太は、本当にそのヒーロー「ウイングマン」に変身できるようになってしまった――。

ZETMAN」もだが、桂正和はこのヒーロー漫画でデビューしているので、本当のヒーローが描きたかったから漫画家になったのかもしれない。勿論、真相は知らないが、読んでいてそう感じる。「ウイングマン」のラストは本当に泣ける、そして切ない。その感じはなんとなく「ZETMAN」に共通するような気がしている。

ウイングマン」は少年の憧れる表のヒーローで、その別のアンサーとして「ZETMAN」を描いて、それで桂正和が描きたかったヒーロー像が完成したようにも思える。改めて読み比べてみると面白い。


[モリタイシ] まねこい

ドラ○もんチックな不思議アイテムで願いを叶えてくれる招き猫・招木猫太郎。初めて恋をした高校生・薗田波留の元に突如現れ、全男子憧れの女子・本田知華子との恋をサポートするが――。

早々に危機回避の為か、コマの中でドラえもんであることをギャグとして語っている。江川達也の「まじかる☆タルるートくん」もそうだが、この手の漫画は「ドラえもんの呪縛」からどう逃げるかになってくる。

やはりラブコメなので、道具そのものの目新しさ面白さには重点を置いていない。出す道具もランダムで運要素があり、その道具次第でラブがコメディする展開は予想できていても十分に面白い。

ラストのラスト、最後の結末だけは納得いかないのだが、終盤ら辺は特に話が面白くて、そのお蔭でこの漫画の主人公とヒロインと、招木猫太郎のキャラが強く頭に残っている。

ラブコメとしてはなかなか衝撃的な、ある意味ではホラーな印象だった。


[松本次郎] 女子攻兵

女子高生型巨大ロボット・通称「女子攻兵」、タキガワ中尉の任務は、戦争の妨げとなる制御不能となった女子攻兵を始末することだった。いつものように第13独立女子攻兵猟隊を率いて、いつものように女子攻兵に搭乗して、いつものように任務を遂行するはずだったのだが――。

女子高生が武器を持って戦争する作品は割とあるし、女子高生型のロボットが登場する作品もまあまあある。だけど、女子高生型のロボットにオッサンが搭乗して、汚染でどんどんどんどんオッサンが女子高生化していく漫画なんて、松本次郎にしか描けないと思う。この設定がとにかく私にはめちゃめちゃツボだった。

あのセリフもあの行動も、女子高生としては違和感ないし可愛い。だけど、それは搭乗しているオッサンらが女子高生型ロボットを操作してやっていること。こんなにも震える作品はそうそうないと思った。次巻が発売されるのがどれだけ待ち遠しく思えたか。何人もの知人に、この作品をプレゼントした(皆イマイチな反応だったが、私はめげなかった)。

なぜ、こんな発想ができるのだろうか。読んでいて嫉妬と羨望しかなかった。今読んでも何度読んでも鳥肌が立つ。


[田中ほさな] 時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。

空木宗也の前に突如現れたのは「未来からやってきた」と自称する謎の美少女・時坂。彼女が未来からやってきた目的は、今の地球に厳しくすること。空木宗也は時坂に唆されて環境破壊を始めるが――。

田中ほさなの絵が可愛いし、ラブコメはちゃんと王道していて、主人公は都合よく一人暮らし。突如現れる美少女モノとしては「かんなぎ」とかなり近い設定かもしれない。幼馴染もいるし。これだけでも一定の面白さが期待できる。

ラブコメも既存が色々ありすぎて大変なんだと思う、未来の地球環境、現代の環境問題にツッコミを入れるのが大筋となっている。

ハッキリ言ってしまえば、未来にならないと現代の問題は判明しないだろうし、現代の環境対策も本作のように、まったくの無意味で、逆に未来の地球を脅かしているのかもしれない。だから、今、本気で環境問題に取り組むなんて、無理だと思う。でも、自分は未来に存在しないにしても、未来に好きな人がいて、その好きな人の未来世界の為に、今、環境を正しい方向に導こうというのは、とても面白いと思った。

結局、全ては愛なのよ。


[押見修造] スイートプールサイド

中学1年生の太田年彦は、自分だけ「毛」が生えてこないことに日々劣等感を抱いていた。逆に、同じ水泳部の女子・後藤綾子は、自身の毛深さに涙を流すほど悩んでいた。そんなお互いを羨む2人。意を決した後藤綾子は、太田年彦に「あたしの毛を剃ってくれない?」と頼むのだが――。

巻末に、「なんかエロいね」という言葉が大きな喜びだった、と作者が書いているのだが、この作者はどの作品を読んでいても「なんか」を表現するのがとても上手いと思う。思春期の「なんかモヤモヤする」「なんか…」「なんか…」という思いは、どんどん薄れていくというか、ハッキリと原因や解消法が大人になるに連れて分かってしまって、あの頃の感覚を思い出すのは本当に難しい。

私は大人になった今の自分の方が遥かに好きなのだが、こうやって男の子と女の子の体の成長をお互いに悩み合ってお互いに解決していく初さは、読んでいて羨ましく思ってしまう。でもきっと、あの頃にこんなことがあったら、彼らみたいに涙を流すほど恥ずかしいし、すぐにでも記憶から消したくなると思う。

ちょうど同じく私も中学生の頃は水泳部で、毛は濃い方ではなかったが、水着から毛がはみ出るようになってきたのは、物凄く恥ずかしくて、毎日のようにつるつるに剃っていた。それを家族に知られたときの恥ずかしさも死にたいくらいだった。

でも、その時期のこの「なんか」がどれだけ貴重で輝かしい青春か。やっぱり、それは大人にならないと分からない。


[稲田浩司×三条陸×堀井雄二] DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 

モンスターが友好的に暮らすデルムリン島に人間は少年・ダイだけだった。魔法が苦手で勇者に憧れるダイは、勇者育成家庭教師・アバンに認められ、特訓を始める――。

小学生のとき、夏休みのアニメで見てこの作品を初めて知った。絵柄が分かりやすく割と可愛い感じで、ドラクエの鳥山明の雰囲気を壊していないのも好印象だった。「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章」は逆に受け入れ難かった。

エピソードとして、「ポップをいつ殺そうか」という思惑があったというのが面白い。結局、ポップは途中で死ぬが、生き返らせることになった。それはポップに絶大な人気があったかららしい。この漫画の主人公は実はダイではなくポップなんだと語られるくらいだ。それは確かに思う、逃げてばかりだったポップの、ラストの成長が堪らない。


[安彦良和×矢立肇×富野由悠季×大河原邦男] 機動戦士ガンダム THE ORIGIN

ガンダムを愛機にして、少年・アムロはシャアとの壮絶な闘いを繰り広げる――。

アニメも漫画も、ガンダムをフルで見たことが今までに一度もなかった。今回、この漫画で初めてガンダムというものを通しで知った。

何これ、めちゃくちゃ面白い。アムロは好きになれなかったが、その周囲の大人たちが本当に魅力的で、ランバ・ラルが好きだという人が多いのも、これでやっと分かった。

ファンにはかなりメジャーな当たり前なシーンなんだろうが、今回初めて知ったのは、カイ・シデンとミハルの話。いや、これは堪らなかった。


[徳弘正也] ジャングルの王者ターちゃん

捨てられていたターちゃんを拾って育てたのはチンパンジーだった。強く優しく育ったターちゃんは、ジャングルの平和と秩序を守る王者と呼ばれるようになった――。

当時、アニメが凄く見たかったが、ギャグが面白いとか以前に、エロ過ぎてとても家族で見られるものではなかった。紙面でもそうだが、このエロさをアニメで食事中の時間帯に流していたのが本当に凄い。

[徳弘正也] 新ジャングルの王者ターちゃん

密猟者、暗殺者たちと戦う日々を送っているターちゃんの元に、格闘家たちが次々と厄介な問題を依頼してくる――。

エロ過ぎる漫画だという印象しかなかったのだが、なけなしの小遣いで第07巻くらいをいきなり買ったら、吸血鬼と戦っていて本格的な格闘漫画になっていることを知った。

この頃には、エロが紙面でも規制されていて、徳弘正也はかなり不満そうだった。だからなのかエロギャグが控えめになって戦いが凄い面白かった。でも元々、メッセージ性のある物語を描きたかったんじゃないかと思う。「狂四郎2030」後の作品を読んでいると。


[奥浩哉] GANTZ

地下鉄に撥ねられ死亡した高校生の玄野と加藤は、見知らぬマンションの一室に転送されていた。そこに置かれていた謎の黒い球体が、二人に指示を出す。それは星人との殺し合いだった――。

冒頭から釘付けで読むのが止まらなかった。中盤、繰り返される星人との戦闘に飽きてしまって、いつまでこの展開なのだろうかと思っていたところで、終盤の展開になって、めちゃくちゃ熱くなる。最終回まで鳥肌が立ちっぱなしだ。

特に真理の話が好きなのだが、あれだけ仲間が死んで、復活して、それを繰り返して、命の重さが変わらない、そんな体験はできないから、考えようがないのだが、人間は、どんな状態になっても、どんな状態で復活しても、愛した人が目の前に再現されたら、同じように愛してしまうんじゃないだろうか。


[平本アキラ] 監獄学園 プリズンスクール

全寮制のお嬢様学校が本年度から男子入学を解禁した。女子高・私立八光学園。入学した5人の男子は、女子に囲まれ浮かれるが、その先には、「監獄」が待っていた――。

絶対に電車の中では読めない漫画だ。エロがあるが、エロいというか、際どいシモネタで、ふいに思わず声を出して吹き出してしまう。その姿をとてもじゃないが人様には見せられない。

ハッキリ言って、この漫画を読んで得られるものは何もない。何もないのだが、完結まで連載を追って読めたこと、この時間消費に全く後悔はないし、胸を張って誇りに思う。

なんだかんだ、監獄に囚われていても、真っ直ぐな青春を送っていることが羨ましい。


[西森博之] お茶にごす。

「デビルまークン」と揶揄され恐れられる最強の不良・船橋雅矢が選んだのは、「茶道」だった。茶道部に入部し、優しさの道を極め、平穏な心と生活を手に入れようと奮闘するが――。

少年はやっぱり、圧倒的な強さ、時には暴力に憧れると思うのだが、私はとにかく小さい頃から暴力が大嫌いなので、主人公が不良であれば、とにかく「不幸」になってほしいと願いながら読んでいる。

どんだけ後から善を尽くしても、例え正義の為であっても、私は暴力は絶対に肯定したくない。暴力による解決は、暴力による新たなる報復を生んで、助けたはずの人たちを何度も危機に晒してしまう。

まさにそのスパイラルに悩む主人公・船橋雅矢。その展開は読んでいて面白い。茶道部員たちの可愛らしさが、それをさらに引き立てる。西森博之は不良にしろお嬢にしろ、女の子の描き方が素晴らしく可愛い。

だから余計に、この作品はモヤモヤする。助けてやってほしいが、解決はやはり暴力なんだよな、と複雑な気持ちにされてしまう。


[水上悟志] 惑星のさみだれ

何の取り柄もない平凡な大学生・雨宮夕日の目の前に、喋るトカゲが現れた。トカゲは「地球の危機」を一緒に救ってくれと懇願し、雨宮は騎士として戦う能力を与えられてしまう。主は隣に住む少女・さみだれ。しかし、彼女は救世主どころか、地球の破壊を企む魔王だった――。

少年漫画の青臭い感じがプンプンするのだが、その友情・努力・勝利は侮れない。救世主のはずの少女が魔王で、主人公はその下僕。仲間の騎士たちに隠れて地球征服を企むそのダークサイドな精神面の葛藤、幼少期のトラウマを仲間と戦う内に見つめ直していく、この物語はやはり雨宮の青春そのものだ。

スピリットサークル」でも同様だったが、人が死ぬことについて、自分の人生について、相手に与える人生への影響について、自分の存在の勝ちというか、何の為に生きているのか、生き続けないといけないのか、本当に色々と考えさせられる。


[藤子・F・不二雄] 藤子・F・不二雄少年SF短編集

藤子・F・不二雄の傑作短編集17編――。

ドラえもん」や「パーマン」しか知らなかった藤子・F・不二雄の作品、それで良かったと思えてくる。少年の頃、「少年SF」とタイトルにあっても、この短編は読まなくて良かったと本当に思う。

ドラえもん」もたまにブラックだが、SFの本作の側面は、とてもリアルで残酷で、大人にしか読後の消化ができないと思う。子供ながらに、トラウマになりそうだ。

「未来ドロボウ」は大人になり少し老いを感じ始めないとその哀愁は理解できないし、「恋人製造法」は恋に失敗してストーカー的な独占欲が芽生えたことがなければ共感できないし、「流血鬼」は既成概念を突かれて思わず声を出して感心してしまった。そういった中でも「宇宙からのおとし玉」みたいな少年心をくすぐる作品があって思わず涙がこみ上げてしまう。

大人になったからこそ、少年の頃を思い返して、この「少年SF」を読むべきだ。


[押見修造] 志乃ちゃんは自分の名前が言えない

自分の名前が上手く言えない女子高生の大島志乃。それがコンプレックスでウジウジする志乃にも、友だちができたのだが――。

どうしても発音できない声が出ない単語があるという知人が私にも一人いた。その人はもう大人だったから、どうにかボキャブラリーを駆使してそれを悟られないようにして暮らしていた。多感な思春期には、相当に辛かっただろうと思う。

志乃は「自分の名前」が言えない。自己紹介が社会では当たり前だから、本当に辛いと思う。それを理解してくれない周囲はみんな敵に見えてしまってもおかしくない。だから、余計に、対等に接して志乃の悪い所も指摘できる加代が、眩しくてしょうがない。志乃の代わりに私が泣いてしまう。

まさかこの作品を映画化するとは思わなかった。


[篠原健太] 彼方のアストラ

高校の課題で惑星キャンプに生徒たちだけで赴くが、突如現れた「謎の球体」に触れた全員が見知らぬ宇宙空間にテレポーテーションされてしまう。生徒たちは何に巻き込まれたのか。右も左も分からない宇宙空間で生き残ることができるのか。放置されていた宇宙船を偶然発見し、惑星キャンプに戻る為の宇宙サバイバルを始める決意をする――。

全5巻で終わったのは少し残念だった。あとがきで作者が「漫画では人気のない宇宙冒険SFというジャンルで新作を描くということには、編集部から反対の声もありました。」と書いていたが、実際に人気がなく全5巻で終わってしまったのだろうか。SF科学的な高度な知識は出てこなくて、少年・少女の等身大の目線で宇宙サバイバルが描かれていて、その不安な感情のぶつかり合いや、芽生える友情や愛情は、見事に「少年漫画」だった。

奇を衒っていないし、ギャグも笑えたし、この世界観は全5巻ではなく、もっと堪能したかった。ただ物語として、ダラダラと帰星する宇宙サバイバルを続けるわけにもいかないだろうし、仕方ないか、という感じで読了。

久々に読んでいてワクワクした、ありがとう!


[武梨えり] かんなぎ

美術部員の高校一年生・御厨仁は、地区展に出す為に木彫りの像を掘った。幼い頃に出会った女神を想って。その心が通じたのか、「ナギ」と名乗る美少女が像から顕現してしまった。果たしてこの少女は何者なのか、現世に舞い降りた目的とは――。

女神を名乗る美少女に日常を振り回されるラブコメお決まりの展開で読んでいて安心する。これまた都合よく仁は一人暮らしで幼馴染もいる。三角関係、四角関係、そこに男子も混じって(?!)、王道のラブコメを読みたいと思ったときにはおすすめだ。

ただ、自分にとっては単なるラブコメだけではなかった。神は、信者から信仰を集めることで力を増す、偶像・アイドルであることが理想だという話が、改めて言語化されると面白かった。

自分は無宗教で、何の信仰も無いのだが、神めいたものは、たぶん、どこかしらの意識にはあるのだと思う。アイドルブームだが、そのようなアイドル信仰も、アイドルにとってもファンにとっても、生きる力強さに繋がっていると思う。自分は今日まで事故もなく病気もなく、30年以上も五体満足に無事に生きているのだが、それを神のご加護があった、と思うか、単なる偶然と捉えるか、人それぞれだとは思うのだが、無意識に、何かの加護を感じているように感じる。具体的に頭になくても、漠然と、例えば、守護霊とか。

彼方のアストラ」で、宗教を廃止し神の概念をなくしたという話が出てくるのだが、おおっぴらに宗教が普及されないだけで、心には何らかの信仰があって、それは断絶できていないと思った。その対象はアイドルだって身近な人だっていいわけで、その想いが生を強くする。

お気楽な気持ちでラブコメを読んだつもりだったが、目から鱗だった。


[横槍メンゴ×岡本倫] 君は淫らな僕の女王

市立の超名門校に通うお嬢様・昴。彼女を追いかけ死に物狂いで勉強し同級生となった幼馴染の主人公・斉藤アキラ。幼馴染だった昴との心の距離は気がつけば最悪の状態に。それを打破する為、噂になっていたある「おまじない」をアキラは実行してみるが――。

岡本倫の話は好きだし、横槍メンゴの絵は好きだし、こんなヤバイタッグはないと前のめりに読んだが、本当に素晴らしく面白かった。まさか、5年ぶりに続巻・2巻が出るなんて思いもしなかった。

エロい描写は多いのだが、その横槍メンゴの魅力的なエロさだけが際立っているのではなく、セリフのチョイスだとか、キャラの表情だとか、これ以外に考えられないベストタッグだと思う。ラブコメとしてもしっかり王道の恋愛してて面白いし、いつの間にか中毒になっていて、気がつけば何度も読み返してしまう。表情、セリフ、あそこのあれなんだっけーってホントに何度もそれを思い出したくなる。

1巻だけだと思っていたので1巻で完結でも良かったのだが、2巻が出てしっかり完結を見届けられたのは個人的にはかなり嬉しかった。


[田丸浩史] ラブやん

25歳の大森カズフサは、ロリコンで、オタクで、ニートという、救いようのないダメ人間。そんな、小学生に片思いするカズフサのもとに、愛の天使・ラブやんが降臨する。恋愛成就率100パーセントの敏腕・ラブやんは、その恋を成就させるのか、しかし、それは犯罪では――。

もちろんギャグなのだが、物凄い悲哀が伝わってくるというか、体中を哀愁で支配される。こういった漫画だと、時間経過が無視されていたりするが、めちゃくちゃ悲しいことに、リアルに時間経過する。26歳、27歳、28歳、29歳、、、いやいや、ホント、悲し過ぎる。哀れで見ていられない。

でも、見てしまう。カズフサとラブやんの掛け合いが絶妙。本当に理想の二人。こんなニートでも十分に幸せじゃないかって、思わされる。こんな歳までニートしているなんて、甘々なわけだが、これくらい長い時間、自分を見つめても、いいんじゃないか?


[若木民喜] 神のみぞ知るセカイ

授業中であっても「美少女ゲーム」を手放さない主人公・桂木桂馬(17)は、「落とし神」と世間から評されるほどのガチオタク。少女たちの心のスキマに隠れてしまった「地獄の悪人の霊魂=駆け魂」を取り除くべく、現実の世界の少女たちを攻略していく。「落とし神」の名に懸けて――。

「ゲーム脳」で出会う少女たちを次々に落としていくお莫迦なお気楽なラブコメを期待して、日々のスキマ時間でダラダラ流し読みしていたのだが、第19巻「女神編」の最終話で、まさかの涙。。。これはマジでやられた。作者も背表紙で「女神編が遂に終わりました。個人的には、もう思い残すことはない!という感じです。」と書いているくらい、渾身の出来だったのだと思う。

この後に続くラストに向けての話がそれほど面白くないのは、やはり第19巻「女神編」最終話のインパクトが強すぎて、気持ちを切り替えられないからだと思う。ここで終わっても良かったが、それだと後味が悪いので、最終巻のラストでしっかり完結して、読後の自分を納得させたみたいな感がある。

いやあ、面白かったよ。


[石田あきら×橙乃ままれ] まおゆう魔王勇者 「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」

長い旅路の末、魔王と1人対峙する勇者。魔王はお決まりのセリフを口にする。「この我のものとなれ、勇者よ」。それに対しセオリー通り「断る!」と答えたはずの勇者だったが――。

現実の世界史に魔王など魔族との対立をファンタジーとして組み合わせて解釈すると、この漫画における魔族の侵略戦争も人間同士の戦争も、何も違いがないということに気付かされる。お互いに利益を求めて略奪し、多くの犠牲を経て協定が結ばれる。

ドラクエII」が生まれて初めてプレイしたRPGなのだが、何の疑問もなく「悪」だと認識して魔王を退治する旅に興じる子供だった。それは本当にそれで良かったのかと今になって思い返してしまう。

交流手段のない異民族の未知なる大地、侵略や略奪しか、アプローチする手段がないのだろうか。人間個人同士も同様で、相手の素性が分からなければ自分のやり方でぶつかっていくしかないのだろうか。ただ、例えそうだとしても、どちらかの破滅まで行うべきやり方なのか。

衝突と和解の繰り返しが歴史だとしたら、ハーゴンとも和解できる道があったんじゃないかって、読後にクリアしたRPGの別世界を思わず妄想してしまう。


[藤原カムイ×川又千秋] ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章

ゾーマが勇者に倒されて百年が過ぎた。世界は新たな魔王・異魔神に脅かされていた。カーメン城の王子はロトの子孫・アルス。アルスは異魔神を倒すため、仲間と共に旅立つ――。

ドラゴンクエストをベースとした同系漫画「DRAGON QUEST -ダイの大冒険-」よりもダークなテイストだったので、子供の頃は好きになれなかった。とにかく戦闘が痛々しくて、人の死がリアルで、笑えなかった。

逆にちょっと成長して思春期になると、これくらいの痛々しい現実味は丁度良い感じだった。古代超文明と絡めてきたり、当時は結構、新しいことを覚える刺激のある内容だった。

「変化の杖」でヤオに変身したポロンが「あぶない水着」姿で悩殺するシーンは、小学生だった弟のみならず中学生だった私にも本当に刺激的で、忘れられない思い出だ。


[石川優吾] よいこ

OL、女子大生、そう見間違うくらいのスーパーナイスバディな江角風花は、実は、小学五年生。母親しか知らない風花は、その母親ともある事情で離れ離れに。親戚の家に預けられた風花は、いとこのジローと初対面する。小学五年生の天真爛漫な風花、着替えることも忘れて、素っ裸、そのとき、ジローは――。

この漫画が、生まれて初めて買った青年漫画だった。少年漫画ではもう物足りなくなっていて、青年漫画コーナーにドキドキしながら入っていって、ジャケ買いした。

堂々と乳首が綺麗に描かれていることにも驚いたが、陰毛までも綺麗に描かれているのがそれまで少年漫画しか知らない思春期にとっては物凄い衝撃だった。青年漫画でここまで有りなんだっていう驚きと、成年漫画は一体どうなっているのかという、大人の社会を底知れぬものに感じた。

今思えば、石川優吾は話はあまり上手くないんじゃないかと思う。小学生によく有りがちな問題だったり、遠足とかのイベントだったり、小学生の集団に大人の女が混じっていることから簡単に発想されるギャグだったり、特別ここだという見所はなく、風花の裸、エロで連載をなんとか続けてきたんじゃないかと感じる。

それくらいのライトな感じで、ギャグも大笑いするところはないのだが、思わずクスッとしてしまうのが、私は逆に凄く好きだった。ギャグもベタというか、そうきたらこうだろ、みたいな期待に応えてくれるし、登場する大人のキャラも、少しずつ増えて面白くなってくる。

いつの間にかこの、絵はエロいんだけどゆるゆるの世界観が、凄く好きになっていて、病みつきになっていた。全15巻も続くのだけど、もっと続いてほしかった。最終回が、凄く寂しかった。


[楓牙] せつない想い

思春期を迎え、幼馴染の祐兎との接し方が分からなくなった涼。部活の終わり、祐兎のタオルを借りて、そのニオイに今までなかった違和感を抱く――。

成人漫画指定が惜しいと思う、本当に青春で、純愛の物語。

好きだという気持ち、その言葉がしっくりこない程、愛しいのに、言葉が先行してしまって、もどかしい。抑えられない程の気持ちが、感極まって、抱きしめ合うことを避けられない、その瞬間を切り取ったこの話は、単なる「エロ」では決してない。

短編映画でも観ているような、誰かの為に生きられることが凄く羨ましくなる、エロだからと憚らずに胸を張ってオススメできる作品だ。


[楓牙] 教師と生徒と

家賃を滞納してアパートを追い出された25歳独身高校教師・森崎麻衣。友人宅を泊まり回るが、すぐに追い出される始末。担任クラスの生徒・西本大介が一人暮らしであることを思い出して――。

成年向けのエロ漫画が好きになれない。エロに特化するためにキャラのスタイルが異様に歪だったり、言動も通常考えられない特異さをアピールしてくるからだ。ただただ読んでいて気持ちが悪い。

私が成年向けに求めるのは、少年向けのラブコメに、ちょっとエロテイストを取り入れた青年向けのラブコメの、ちょっとエロテイストのところがリアルなエロさになっているものだ。要するに、青年向けから成年向けになると、前述のような途端に振り切ったエロ抽出になってしまうので、そうではなく、ストーリーにリアルな男女のエロい情事を取り入れてほしいのだ。

そんな漫画は存在しないと思っていたのだが、半信半疑で検索して、初めて知った楓牙の作品群。ストーリー性の素晴らしさが評価されていて、出るものはアレではなく涙だった、という人がかなり多かったので、初めて成人向け漫画、本作を買った。

普通に恋愛漫画として、切なく、愛しく、確かに、アレよりも先に涙が出る素晴らしい漫画だった。いつしか、エロなんてどうでもよくて、この二人の恋愛を読みたいが為に、何度も本作を手に取っていた。

もっと、こういう成年向けの漫画は出てこないのだろうか。やはり、話を作るのは、圧倒的に難しいのだろう。


[鳥山明] ドラゴンボール

山奥で一人暮らす孫悟空は、ブルマと名乗る少女と出会う。ブルマは、七つ揃えるとどんな願いでも叶うという「ドラゴンボール」を探していた――。

もはや紹介するまでもないのだが、少年期に読んだ漫画でコレを超えられるものはなかった。

敢えて思い出を語るなら、ウーロン扮するブルマが牛魔王の城跡で亀仙人に対してベロンっとおっぱいを出したあの場面、ギンギンに性に目覚めた瞬間だった。少年の私はこれで完全に覚醒してしまった。

でもなんていうか、正体がウーロンだとか男の頭はどうでもいいんだね、気づかなければニューハーフでもいいっていう。。。


[西森博之] 柊様は自分を探している。

正義の男、高校生・白馬圭二郎は、自分の正体が分からぬという美少女・柊と出会う。圭二郎は柊から家来に任命され、家で預かることに――。

お茶にごす。」もだが、西森博之はいつも不良が主人公で、悪側の暴力、それが善への導きでも、あまり好きにはなれなかった。ただキャラたちが凄く味わい深いから、女の子たちも凄く可愛いし、という側面だけで読んでいたところもある。今回のは、真っ当な正義漢で、なんとファンタジーなバトルってことで、いつもの西森博之とはかなり違う印象だった。

そして純愛だ。ラブコメ的な恋愛じゃない。色々と今回の西森博之には驚かされた。ど真ん中の純愛を見せられて、この結末は涙するしかなかったというか、この結末は、全く予想できていなかった。切ない。死ぬって何なんだろうか。


[押見修造] 惡の華

ボードレール」を至高のものとする春日高男は、放課後の教室に落ちていた佐伯奈々子の体操着を盗んでしまう。その一部始終を仲村佐和に見られてしまい――。

好き嫌いが別れる青春時代の黒く深い闇。読み手をかなり選ぶだろう。

仲村佐和に出会えたことは、春日高男にとっては幸運だったと思う。ずっと鬱屈してそれを誰にも吐露できなくて、自分で消化して大人になっていくしかない。仲村佐和のおかげで恥ずかしくもぐちゃぐちゃに他人に向けて吐き出せたことは、本当に貴重な体験で、読んでいて羨ましくもある。

大人、親はこれを恥ずかしいと考え、子を責める。それは何故なのだろうか。それは後悔で、子には同じ思いをしてほしくないという心からなのだろうか。少なくとも私はそれは教育の結果だと思う。それも含めて認めてあげようという大人たちの包容力がないから、こうして子は闇に陥るのではないのだろうか。


[徳弘正也] 狂四郎2030

第三次世界大戦が終結し、五年が経過した。西暦2030年、日本では男女隔離政策を強制していた。国民は、国から「バーチャSEX」という疑似性交マシンを与えられ、航空警備巡査・狂四郎もそれに興じる一人だった。しかし、科学者の脳を移植され人語を話す犬・バベンスキーと出会い、狂四郎は日本の真実を探ることになる――。

新ジャングルの王者ターちゃん」の連載中にエロに対する規制が入り、それについて徳弘正也はとても不満そうだった。確かに、徳弘正也のエログロ描写は、元々から少年誌向けではなかったと思う。青年誌での連載になり、徳弘正也の良さが最大限に引き出されたように感じる。

SEX描写もさすがのエロさで素晴らしいが、愛に対するひたむきさ、狂気、真に迫るものがあり、読み応えはさすがだ。戦後は洗脳教育が当たり前になるだろう、現実の少子化を考えたら、バーチャSEXで十分だという人たちも多くいるだろう、それでも狂四郎やバベンスキーのように、体制に疑問を持ち、クーデターを起こすこともあるだろう、最終的にこの世界がどこに行き着くのか、現実でも、ロボット社会になったら、不要とレッテルされた人間は淘汰されるのかもしれない。遺伝子レベルで。


[弐瓶勉] シドニアの騎士

巨大な播種船・シドニアで宇宙を旅する人類。宇宙から突如飛来した異生物・ガウナ(奇居子)によって太陽系は破壊された。あれから千年。シドニアの最下層で育った青年・谷風長道は、衛人と呼ばれる大型ロボット兵器の訓練生となったが――。

弐瓶勉の作品はどれも面白いのだが、セリフが極端に無かったり、世界観の説明的なものも無いことが多いので、自分で想像補完して楽しむ必要がある。

だから結構疲れる作風という印象だったのだが、この「シドニアの騎士」は今までと大きく違った。かなり読者に歩み寄ってきている。そしてその距離感が絶妙で、過去の弐瓶勉の作品の中で、私は本作が一番面白い。

作中の世界設定もそうだし、ロボットや兵器の造形も、男子の心をかなりくすぐってくるカッコよさ、でも今作で驚いたのは、人間ではない異型の生物を、思わず「可愛い」と感じさせてしまう画力というかその表現力だ。

異型の生物に恋をしてしまうことに納得させられてしまう、結局、容姿ではない見てくれではない、真は心なんだって、それは全宇宙共通なんだって思わされる。ブスと距離を置いてしまう自分を恥ずかしいと思わないといけない。

連載中の「人形の国」に「シドニアの騎士」に出てくる用語などがいっぱい出てくるのだが、今はまだ、世界が共有されているかどうかは、明かされていない。これも今は、連載が楽しみで仕方がない。


[臼井儀人] クレヨンしんちゃん

毎日が大騒動、嵐を呼びっぱなしの幼稚園児、野原しんのすけ――!

臼井儀人が死んだとき、ショックでショックで仕方がなかった。小学生のとき、唯一欠かさず買っていた単行本で、発売される夢を見た契機で書店にチャリでダッシュで買いに行っていたのは、本当に良い思い出だ(夢だからもちろん売っていないのだが)。

当時、「漫画アクション」に掲載されていた「クレヨンしんちゃん」は、まだターゲットが大人で、シモネタバリバリだった。その背徳感というか、子供が見ちゃいけないんだろうな感もまた、購買意欲を子供ながらにそそられていた。今でも全巻を手放せない。結構、宝物な位置づけになっている。

臼井儀人が死んだ後に出た「新クレヨンしんちゃん」、期待していなかったんだが、中期くらいの王道ギャグが復活していて、悔しくもクスクス笑ってしまった。嬉しくてちょっと涙出た。


[岩明均] 寄生獣

宇宙より寄生生物が降り注いだ。動物の脳に寄生して神経を乗っ取り支配する。しかし、失敗があった。高校生・新一は、右手の寄生しかできなかったこいつをミギーと呼ぶことにした――。

初めの頃の少しギャグめいた展開から、ラストは哲学的な秀逸なヒューマンドラマを魅せられて、子供心に多くを感じさせられた。

SFではあるが、宇宙からの飛来物、飛来生物は決して有り得ないことではないと思う。ウイルスが生物か無生物かという論争があるが、何を以って宇宙の生命体とするかは、地球人の尺度だけでは解決できないことが極めて多いのではないだろうか。

それは人間とは何なのか、宇宙からの視点において、ということを、ミギーの語りと共に、改めて考えさせられる。


[武富健治] 鈴木先生

中学校の教師である鈴木。日々巻き起こる大小の事件に全力で立ち向かう。学生時代にシミュレーションした自身の教育論を信じて――。

この学校、この教師たち、この生徒たち、リアリティを求めてしまったらさすがにそこは漫画としてデフォルメされているわけだが、だからこそ教育の問題が分かりやすくなっている。

私はずっと教師たちに恵まれなかったと思っていて、同じように多くの学校では教師と生徒は多分にすれ違っていると思う。鈴木は、生徒一人一人の「本当の声」を必死に気づこうとしている。こんなことが現実の教師に務まるか、そんな余裕はないように思えるが、教育の理想としては、嘗て学生だった身としては、一人でもこうやって本当の声に気づいてくれる教師がいれば、救われる生徒は大勢いると思う。

ずっと教師に気にしてほしいなんて思わない、たった1人、分かってくれる大人がそのときにいただけで、子どもたちはずっと前を向いて歩いていけると思う。信じられる大人が世の中には一人でもいるということが知れたことで。

[武富健治] 鈴木先生外典

みんなが鈴木の信者みたいになっているのが理解できなかった、一歩引いていた、という一人の生徒の本音、この漫画の違和感を私に正してくれた。

私も同じだった。教室のノリにはついていけないし、教師と生徒のお決まりの掛け合いにも一度も笑えなかったし、同窓会にも一度も参加したことがない。この外典を最終巻に据える武富健治は、やはり、本当に教育の問題に一石を投じたかったのだと思えてくる。

鈴木のやり方だけが正解ではない、それは当たり前で、別のアプローチで生徒に向き合う鈴木ではない教師が必要なんだと、読者に訴えているように感じた。


[久保ミツロウ] アゲイン!!

金髪にロン毛という出で立ちで過ごした高校三年間、不良と敬遠され友達は一人もできず、とうとう何の思い出もないまま卒業式を迎えてしまった今村金一郎。旧校舎に侵入したところを同級生の女子・暁に見つかり、誤って一緒に階段から転げ落ちてしまった。意識を取り戻すと、三年前の入学式の日へタイムリープしていた――。

三部けいの「僕だけがいない街」と同じで、タイムリープもの。この時期、タイムリープが流行っていたのだろうか、タイムリープものがいくつも連載開始した印象がある。

学生時代の後悔は誰にでもあるのではないだろうか。黒歴史とまでは呼ばないまでも、こうしておけばよかった、なんて思いは、青春として片付けられる。

でも、もし、やり直せるなら、どうするだろうか。今村は人との関わりがなかった三年間を、人との関わりのある三年間に変えようと必死だ。やっぱり、自分ができなかったことを、するだろうか。

でも、そう上手くいくように自分だったら思えない。結局、自分は自分で、その時々の選択は、自分としては避けがたい選択だったのではないだろうか。

今村は卒業式の日にすぐやり直したからいいが、これがすっかり大人になってからだと、「僕だけがいない街」みたいに、大人が子供の世界に紛れ込むわけだから、そのパターンではもっと違った物語になったのかもしれない。それはそれで面白そうだ。


[三部けい] 僕だけがいない街

売れない漫画家の藤沼は、アルバイトで生計を立てながら鬱屈した日々を送っていた。アルバイト先であるピザ屋での配達中、藤沼は違和感を覚える。これはいつもの症状だった。時間が巻き戻る。この違和感を解消しない限り、永遠に――。

当時、ジャケ買いしたのだが、一巻だけを読むと、面白さが理解できなかった。まず、漫画家が漫画家の話を書くのは好きではなかった。絵柄が好きになれず、ごちゃっとしていて事件の細部の意味が理解できなかった。

それでかなり時間を空けてから、改めて続巻を読むことに気合を入れてチャレンジしたのだが、めちゃくちゃ面白いタイムリープ・サスペンスだった。

散りばめられた伏線、登場する子どもたちが少し大人びている感じもするが、母親や同級生たちの考え、行動、選択は、堪えていても涙が自然に溢れ流れてしまう。第08巻で物語は完結なのだが、第09巻でサイドストーリーが語られる。鳥肌が立ちっぱなしだった。

こんなに震えた作品は、近年、なかったと思う。


[柏木ハルコ] 花園メリーゴーランド

父親の故郷へ向かう道中でバスを乗り過ごしてしまった高校1年生の相浦。そんな相浦に声を掛けたのは、澄子という民宿の娘だった。悪天候など不運が重なり、山奥の閉鎖的な集落で連泊を余儀なくされるが――。

都会では考えられない「性」の概念。日本は貞淑というイメージが強いが、それは現代に限った話で、昔、本当に少し前までは、日本人も性に大らかだった。「夜這い」の習慣は当たり前で、現在においても尚、閉鎖的な集落ではその習慣が根強く残っていても、何もおかしいことはないと思う。

今の日本の教育の中で生きて育てられた思春期の相浦には、集落でのこの古い「性」のしきたりは、とてつもない衝撃だったろう。私がこの作品を初めて読んだのはまだ学生だったので、相浦と同じ体験をしたら同じように衝撃で動揺しまくるだろうと感情移入が著しかった。

澄子は美少女という設定なのだが、この頃の柏木ハルコの絵は残念ながら下手くそだ。「健康で文化的な最低限度の生活」で柏木ハルコを久々に読んで、絵の上達ぶりに大変に驚いたくらいだ。

なので澄子の美少女っぷりは絵で表現できていないのだが、澄子の言動は思春期特有のもので、読んでいてかなり可愛い。ここはさすが漫画家としてツボをよく分かっている。自分が当事者だったら澄子の言動は堪ったものではないのだが、私も澄子とこの事件・出来事を体験し青春を経験したような、そんな気になるくらい読んでいて没入してしまう。

相浦の成長、心の変化、大人への一歩、間違いなくこの瞬間が起点で、私自身の青春の思い出のように、未だに鮮明に強く私の頭の中に残っている、不思議な作品だ。


[水上悟志] スピリットサークル 魂環

中学2年生の桶屋風太と転入生・石神鉱子には因縁がある。それは、深く、悲しく、残酷な、魂の因縁。幾度も繰り返した輪廻転生の中で2人の少年・少女は何を見たのか。何を体験したのか。魂の結末は――。

魂とは何か、精神とは何か、肉体とは何か、脳とは何か、人間とは何か、宇宙とは何か、神とは何か、「自分が存在する」ということの意味を改めて考えさせられる。輪廻転生を繰り返して今の自分がいるとすると、今の自分の在り方やこれから起こる未来は、その因縁の結果なのだろうか。

死、とは何か。魂の存在はそれを揺るがせる。人間が物を作り、それをリサイクル、コピーするように、人間より上位の存在には、魂も、同レベルの「物」でしかないかもしれない。

進化は、現在が前提条件なのだという。人間の次の進化は、人間を前提条件とすると、次は「機械生命体」ではないかという議論もある。そのとき、魂は、どこへ……?

最終巻の結末は素晴らしかった。泣いた。それは、自分の魂の結末も、こうでありたいと願ったからだ。

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